知らない友人が知り合いだった
投稿者:A (4)
A達は俺を見つけるなり笑ってたが、俺はそれよりもXを探すのに夢中だった。
「俺、ここ」
Xは俺が見つけるより早く自分から指を差してくれた。
そこには笑顔で写っている制服姿のXがいた。
確かに俺と同じ高校に通っていたようだ。
「な?」
「お、おう。ごめん、マジで覚えてない」
「ひでーwww」
Xが俺と同じ高校に在籍していたのは分かったが、それでもやはりピンとこなかった。
「まあいいや。高校じゃそんな話さなかったから、ちょっと話してみたくなっただけだから」
Xは俺が覚えていなくてもそこまでショックじゃないのか、ヘラヘラしてた。
「まあ、また今度遊ぼうぜ。俺次の講義行くからまたな」
この時、Xは特に落ち込む事もなく、何かお洒落なリュックを肩で担いで颯爽と教室を出ていった。
A達が「またなー」って手を振ってたけど、俺はXの後ろ姿をじっと見つめながら、既に立ち去ったXが本当に知り合いなのかずっと考えていた。
するとCが「お前、本当に思い出せねえの?俺だったらアレは忘れない自信あるわ」とか言い出す。
「それな。ぜったいカースト上位」と、Aが続く。
ただ、そんな事を言われても思い出せないのだから仕方が無い。
そして、この日から俺はXと言う記憶にない男のせいで悩まされる。
Xは構内ですれ違うたびに話しかけてきてきた。
俺と被ってる講義の内容から始まり、俺が何かリアクションすると「お前、変わんねえなww」と昔馴染みみたいな反応をする。
だいたいいつもA達の内の誰かと一緒に行動する事が多い俺は、その反応を「そうか?あはは……」と愛想笑いで受け流すが、Xが俺の昔の話を持ち出すとA達の誰かが食いついて昔話に花が咲く。
Xの昔話はどれも俺の記憶に真新しいものだった。
体育のサッカーでずっこけて膝を擦りむいた話。
女子が某アプリの動画を撮る時に俺が背景に映っててからかわれた話。
そんなくだらなくも、記憶に残っている話を語るX。
だが、その度に俺は自分の記憶を疑い始めた。
確かに記憶にはあるんだが、やっぱりその場にXが居た記憶は無いし、学校で出会った事も無い。
それなのに、俺が「それ誰から聞いたの?」と聞けば、Xは「いや、その場に俺もいたしw」と返してくる。
そういった記憶の食い違いが多すぎて、俺はXの事を気持ち悪く思い始めた。
そんなある日のこと。
またいつものようにXが俺達のグループに交じって談笑してたんだけど、俺の地元の駅が改装工事しているといった話の流れで、Xはこんな事を言った。
自分のことより、先に謝った方が良いのでは?
いじめられた側はずっと忘れないものですから。
怖いけどモヤモヤしちゃうな
なんかの話で騙すって言って騙さないことって騙されないことになるんじゃねって言ってるのを見たわ
「された相手は騙されるのを恐れて勝手に自爆した」
〇秒後に意外な結末 ミノタウロスの青い迷宮 第45話