渡り歩く帽子
投稿者:ぴ (414)
私はぐでんぐでんに酔っ払い、電車の中で眠りこけていました。
目覚めてすぐに一駅乗り過ごしたことに気が付き、大慌てになりました。
すぐに電車を降りようとしたのですが、そこでふと見知らぬ帽子を握りしめていることに気づいたのです。
誰の帽子なのかと疑問に思いつつ、私のものではなかったので、それを電車の座席に置いて、電車から降りました。
なんとか電車を乗り継ぎ、家に帰ってきたときはもう真夜中になっていました。
疲れたと部屋で横になっていたら、カバンがもぞもぞと動いたような気配がありました。
飲みすぎたかなと思いながらこめかみを押さえていたら、やっぱりカバンの中で何かが動いているのです。
怖いものなしでカバンを漁ってみたら、そこからあの帽子が出てきたのです。
見てすぐにざっと寒気が沸きました。
だってこの帽子は確かに電車の座席に置いてきたはずのものだったからです。
なぜカバンに入っているのかと疑問が沸きました。
誰のものかは分からなかったけど、とにかく気持ち悪いので、そのまま部屋のごみ箱に捨てたのです。
そのまま処分してしまえと思いました。こうして布団を被って気づいたら朝でした。
朝起きて、仕事に遅れないように身支度しました。
これでよしと外に出たときでした。目の前を人が横切ったのです。
同じアパートの住人かまでは分かりませんでしたが、特に特徴のない低身長の男性でした。
その男性はふっと頭を下げ、そのときに見たものに目を疑いました。
なぜならその男性は見覚えのある帽子を被っていたからです。
昨日私が電車で見つけたあの帽子でした。
しかし、私はそれをゴミ箱に捨てたはずです。
なんでこの人が被っているのかと、すぐにUターンして自分の部屋のごみ箱を確認しました。
けれど、あの帽子は最後までどこからも見つからなかったです。
もしかしたらあの帽子は、人から人へ渡り歩く帽子なのかもしれません。
捨てても捨てても戻ってくると怖いので、あの男の人の手に渡って良かったなと思いました。
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