寂しい人形
投稿者:take (96)
「やっぱそうかあ……弟と妹が霊感強いから相談してみるよ、とか言っちゃったんだけど、結局その手しかないんだね」
と、姉は呑気なものです。
「もー、お姉ちゃん、ウチらのこと、勝手によその人に喋んないで」
妹が不機嫌そうに不服を申し立てましたが、
「はいはい、ごめんねー」
姉はどこ吹く風と聞き流しながら、携帯でゲームをプレイし始めます。
妹が、姉に聞こえないように、
「お兄ちゃんの部活の先輩に相談したらいいんじゃない?」
と、そっと私に耳打ちするように言いました。
「ええ、無理だって。その先輩だって除霊なんてできないって言ってるんだからさ」
「そっかあ……まあそうだよね」
妹は冷蔵庫からジュースを取り出すと、そのまま自室に引き上げていきました。
「……と、いうことがあったんですけど、先輩はどう思います?」
私が姉から聞いたことを話すと、理香先輩はちょっと眉間に皺を寄せて考え込みました。
妹には、ああ言ったものの、結局私は弓道部の一年上の先輩に相談していました。
理香先輩は規格外の『霊感体質』で、このテのことに慣れています。
一方でやたらと妖しげな存在を引き寄せる体質でもあって、同じ『霊感体質」の私は、
その巻き添えを食って、怖い目にも遭っていました。
「うーん……きみさあ、私を除霊師かなんかと勘違いしてない? 話を聞いただけじゃよくわかんないし……」
そういうと切れ長で涼しげな目で私を見つめると、腕を組んで首を傾げました。
私と妹の霊感体質を過信して、そのテの相談を持ちかけてきた姉と、
同じことを先輩にしてしまっていたのです。
「す、すいませんでした……姉の友達が困ってるって言うからつい……失礼しました」
私は慌てて頭を下げました。
先輩はちょっと笑うと、「まあいいけどね」と、紙パックのフルーツジュースを一口飲みました。
「それで、〇〇(私)くんは、どう? やっぱり霊とかそんなもんだと思う?」
「そうですね……うーん、やっぱり僕は気のせいじゃないかと」
話だけ聞いていると、人形に魂が宿って……とかベタな展開を想像します。
でも、百年前の古い日本人形とか、海の向こうから渡ってきた歴史あるフランス人形とかなら、
そういうこともあり得るかもしれませんが、大学生の映画研究会サークルが撮影のために作った小道具です。
「人形の霊とか魂とか考えにくいですよね」
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