山で見たモノ
投稿者:まろ (12)
と猿渡は笑い飛ばし、小屋の中に入っていく。桃田はガタガタと震えだし、明らかに名状しがたい雰囲気であることはばあちゃんからみても分かった。ばあちゃんは桃田の背中をさすることしかできなかったという。
「ぎゃあああああああああああああああ!!!!」
小屋の中で叫び声が響いた。ばあちゃんは急いで一人震える桃田を残して小屋の中へ突入した。中には、猿渡が一人倒れていた。小屋を見渡すも内装は机といすがあるだけでそれ以外には何もない普通の山小屋であったそうだ。そして、猿渡はむくりと起き上がり
「ぎゃはははははははははははは!!」
と笑い出した。
「びびったか?冗談だっての!小屋の中には何もなかったぞ!いやー、びっくりしただろ!」
と、ゲラゲラ笑っている。ばあちゃんは怒りがこみあげてきて、泣きながら猿渡を平手打ちしたらしい。ばあちゃんはありとあらゆる罵詈雑言を浴びせたといっていた。本気で驚いたのも当然である。そして猿渡と小屋を出ると、うずくまっている桃田に何もなかったことを告げてもう帰ろうという話になった。桃田は心底安心したようで
「よかった…本当に良かった..」
と繰り返していた。そして小屋を後にし、帰路についた。しかし、未開の道であるため一行は迷ってしまった。
「ほら!やっぱり迷った!こうなると思った…」
とばあちゃんたちは愚痴りあっている。そして、山小屋が見えてきた。そう、先ほどの山小屋が。気付いたら元の場所に戻ってきてしまったらしい。
「バカ!元のところに戻ってどうすんのよ!」
と猿渡を責めたが
「わかんねえよ!俺本当に今回は道を覚えていたんだって!」
埒が明かないのでもう一度もと来た道をたどることにした。この時点でもう夕方の5時。あと30分で元の小屋に戻らなければいけない時間である。急いで道を戻るも、またもやあの小屋へ戻ってきてしまった。
「うそでしょ?なんで…?」
三人は驚きを隠せない。桃田のいやな予感は的中した。そしてもう時刻は5時30分を切っていた。
「ねえどうすんの?あの二人だって絶対心配してるよ…」
ばあちゃんの時代は携帯電話がないため連絡を取ることができなかった。仕方なく、その小屋で一夜を過ごし、夜が明けたら再出発することにした。この決定に最後まで嫌がっていたのは、やはり桃田だった。しかし、野宿するわけにもいかずしぶしぶ桃田は小屋に入った。この小屋は明かりがないため、月明かりだけが頼りだった。
「まあそう落ち込むなよ!小屋があっただけいいじゃないか!机といすしかないんだしヤバいものなんてないし!」
と一人だけ楽観的なのは猿渡だった。ばあちゃんは震える桃田を落ち着かせようとし、気を紛らわせるために三人で何か遊んで暇をつぶそうと提案したそうだ。かといって、何か遊びを思いつくに至らず上京後どうしたいかなどたわいもない話を続け、気づけば三人とも眠ってしまった。
そして、ばあちゃんは猿渡に突然起こされた。夜中の2時を過ぎたあたりの時であった。
「なんか聞こえる…起きろ!」
ばあちゃんは起こそうとする猿渡を無視しもう一度寝ようと思ったが、
コン、コン….
と小屋の扉をノックする音で意識が完全に目覚めたそうだ。ばあちゃんは飛び起き、桃田を確認したが桃田はまだ寝ており、猿渡と二人で起こさないことに決めた。二人でドアを見つめること、しばらくの沈黙が続く。ばあちゃんが気を緩めかけたその時
「おーい」
とドアの向こうで声が聞こえた。その声は、雉谷の声だった。
「入れてくれー」
「私よ!いれて!」
猿渡なんか身近にもいそうな存在で消えてほしくない…
まろです。祖母は猿渡の顔なども鮮明に覚えているそうで、あの時のことは忘れられないそうです。未開って怖いですよね。今の文明に支配されておらず自然の状態が一番怖いと思います。
桃田=桃太郎 猿渡=猿 犬飼=犬 雉谷=雉
考察ですが仮名の付け方って「桃太郎に」沿っているんですか?
まろです。その通りです!ちょっとした遊び心です!
まろです。その通りです!ちょっとした遊び心です!
けっこう怖かったです