夜泣き

私が赤ちゃんの頃の話です。

私の母は、2人目の出産で弟を無事産み終えた後、出血多量で同日亡くなりました。
まだ20代初めの若い母親でした。その当時はまだ、医療ミスも多かったので不幸な出来事でした。

母が亡くなって父方の祖父母が面倒を見てくれて、そのせいで家族が毎日怯えていたそうです。
後に大きくなってから聞かされたのですが、義父母のところに行った初日から半年以上、毎晩夜中の12時になると、時計の鐘が鳴るかならないかのタイミングで私が泣き始めるそうです。

しかも、なかなか泣き止まない。かなりの時間ないていたそうです。
時計の時間もわからないのに、毎日12時の鐘と同時くらいに泣くのが怖かったそうです。何をしてあやしても泣き止ませるのが大変だったと聞きました。

しかし、これだけではありませんでした。
父も同じ家にいたのですが、母が亡くなって、神仏など居ないとまで言って荒れた生活をしていた父のところにも、毎晩母が来ていたそうです。
寝ようとして、部屋の電気を消して布団に入ると同時に部屋に誰かがすぅーっと入ってきて、と同時に金縛りになる。

これが毎日欠かさず半年ほど続いたある夜、父は腹を立て「俺たちを置いて行ったのに、毎日毎日何しに来てる！言いたいことがあるなら出てきてはっきり言え！」と怒鳴ったそうです。その日を最後に母は、父の前に現れることはありませんでした。

私は、母方の祖父母が私に会いたいと預かって母の実家に連れて行かれた日の夜、やはり夜泣きしたのですが、家の外へ連れ出した祖母から聞いた話によると、私が母の弟の車を覗いては、「いない」家の中であちこち見ては「いない」、寝室の仏壇の前でじっと見ていたので、中から母の写真を私に見せると写真を持って「ママ」と言って泣き止んだそうです。
ママは死んじゃったけどここにいるよと祖母は言い聞かせたそうです。

その日以来、半年以上続いていた夜泣きは治りました。子どもを想う母の愛は海よりも深いのだと子どもを産んで実感した話です。