親友との約束
投稿者:take (96)
友人から聞いた話です。
友人の知り合いでバーを経営しているY子さんは、還暦過ぎの姉御肌の女性です。
彼女には、M美さんという親友がいました。
小学生の頃から仲良しで、よく戯れに、
「どちらか先に死んだ方が、もうひとりが夜寝ている時に足をくすぐって驚かせに行こう」
と話していたそうです。
お互い社会人になって働くようになると、お洒落もし始めます。
M美さんは真っ赤なマニキュアが好きだったと言います。
そんな仲良しの二人でしたが、25才の時、M美さんが交通事故で亡くなってしまったのです。
Y子さんは悲しみ嘆き、しばらくは寝込んで起き上がれなかったほどでした。
そして、M美さんの初七日も過ぎた頃、夜中にY子さんはふと目を覚ましたそうです。
足の裏に何かが這い回ったような感覚がある……。
もしかしたら虫か何かがいるのかと、明かりをつけて確認しましたが、変わったことはありません。
夢か気のせいだったのかと、明かりを消し、寝ようとしていたときです。
再び足の裏に刺激を感じたのです。まるで誰かにくすぐられているような?
慌てて布団を跳ね上げて飛び起き、枕元のライトスタンドをつけて、見たものは――。
爪に真っ赤なマニキュアを施した手首から先だけが、Y子さんの足をくすぐっていたのです。
悲鳴を上げるとともに、亡くなった親友との戯れの約束を思い出しました。
本当にM美は私を驚かせに来たんだ……!
親友の死は悲しい出来事でしたが、こんなことをされるのはやはり恐ろしいことでした。
「ごめん、M美、もうやめて!」
Y子さんは泣きながら手を合わせると、手首はふっと消えました。
その後、M美さんの手があらわれることはありませんでした。
「向こうに行ったらね、あのときは怖かったよってM美に文句を言ってやるんよ」
と、Y子さんは真っ赤なマニキュアをつけた指で、煙草に火をつけながら笑って言ったそうです。
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