洗面器の水　(加筆修正版)

10階建てのマンションに引っ越した。
築年数は50年。古いけど、中は改築されて新品同様のキレイさ。
格安でもあり、すぐに契約を決めた。

気に入って入居したけど、古いからね、もちろん良いことばかりじゃない。
なんだかちょっと空気が淀んでいる気がするし、それになんだか水が臭い。
築年数が古いせいでやっぱり見えない配管とか劣化しまくっているんだろうな。

台所の蛇口には浄水器を設置して臭みはなんとかなった。
飲み水は基本的に外でミネラルウォーターを買ってくることで対処した。

だが、どうにも気になったのが風呂の水だ。
普段はシャワーだけで済ませているのでそれほど気にもならないが、

たまにバスタブに湯を張ってゆっくりお湯に浸かってみると、
それがどうにもこうにも、お湯の匂いが生臭い気がして台無しな気分になる。
だから、湯船に浸かりたい時には温泉の素を入れるのが欠かせない。
これで少しはごまかせる。

一瞬、屋上の水タンクに何かの死体でも浮いているんじゃないかと思ったこともある。
『ほのぐらい・・・ナントカ』言う映画みたいに。
でもこのマンションは１階から３階までを企業が使ってて、管理も清掃も行き届いてる。
水タンクに異常はないそうだ。

・・・・・・

そんなある日、おかしなことに気が付いた。

オレは毎朝シャワーを浴びるのだが、風呂場の隅っこに置いてある洗面器、
アレになぜかナミナミと水が溜まってることがあった。

「きっと昨日風呂入った時に水を捨て忘れただけだろう…」
そう思って、あまり深く考えずにその水を捨て、シャワーを浴びた。

だが、そんな風に洗面器に水が溜まっていることが２回、３回と起こるようになって、
「これはちょっとおかしいぞ??」と、遅まきながら思うようになった。
さすがに昨日はちゃんと捨ててから出たはずだ。

とりあえず気を取り直して、今度こそ風呂場から出るときには、かならず洗面器が空かどうかを確かめて、ひっくり返してから出る!と心に決めた。

・・・・・・

数日後。