あれは
投稿者:古川ゆう (1)
自分に落ち着けと暗示を掛けていたのかもしれない。
すると突然、オレンジ色に照らされた街灯の下を人影が歩いてきたではないか。
遠目からでも姿形を見て分かった。
白い服、黒のズボン。
背も青年の背丈程ある。
「間違いない、後輩だ。」
「良かった。」
ゆっくりとこちらに向かって歩いてくる後輩の姿を見て先程まであった筈の恐怖心は薄れていき胸を撫で下ろした。
僕は嬉しくなり後輩に「お〜い!」と大きく手を振った。
あちらも僕の手の振りに気づいたのか大きく手を振り返してきた。
カーブを抜けるとその先からはこちらまで街灯1つない暗闇の道路であった為その人影は見えなくなっていた。
「まあ、カーブからここまでの距離だ。もう少しで歩いてくる筈だろう。」
「数分の間、目の前の海でも眺めて待っていよう。」
「ラーメンは伸びたけどちゃんと食べよう。」
沈黙の数分間、ちゃぷんちゃぷんと壁に打たれる波の音が耳に入ってくる。
ブブブ、ブブ、ブブブブ、ブブブブブ
突然、ズボンのポケットにしまっていた携帯のバイブが鳴り出した。
「ん?」
携帯を取り出し名前を確認する。
その相手は、先程見た後輩からの電話だった。
通話ボタンを押し携帯を耳に当てる。
僕「なに、どうした?」
後輩「ごめんごめん!遅くなった、今から行く!」
後輩「ちょっと夏休みの宿題しよったんよ、ごめん。」
僕「あ!? え!? なに!?? 何が!!?」
後輩「何がって…今から行くんよ笑」
僕は一気に背筋が凍り付き嗚咽しそうになった。
嫌な予感がして暗闇の道路を見るがやはり、先程手を振った人影は来ていない。
僕「いやいやいやいや!!おかしいって!!!」
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