夏祭りの法被
投稿者:aya (4)
短編
2022/12/18
12:30
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私は以前、都内の保育所で働いていました。これはその時に体験した出来事です。
ある夏の時期のこと。
園内で行われる夏祭りのイベントが迫っており、年長児の担任だった私は準備に追われていました。
その日残業で行ったのは、夏祭りで使う神輿作り。四角い台の上に猫の人形が両手を広げて乗っており、それに法被を着せたデザインでした。
子供も他の職員も全員帰ったこともあり、私は広い部屋で1人作業に没頭していました。
猫の人形を取り付け、そこに法被を着せ、持っていたスマートフォンで着せかたなども全て調べた結果、時間はかかったもののなかなかの力作に仕上がりました。
その出来栄えに満足した私は、子供がそれをいじらないよう高いところにしまい、鍵を閉めて園を後にしました。
次の日、私が出勤すると、園長が私に言ってきました。
「かなり良くできたわね。いいお神輿だわ」
褒められて嬉しくなった私ですが、その後の一言に首を捻りました。
「あとは法被の着せ方だけ直しといてね」
何のことかと思いお神輿を下ろしてみると、昨日確かに着せ方を調べ、自分の利き腕のこともあり注意深く着せた法被。
その襟の合わせ方が左右逆。即ち死人に着せる際のものになっていたのです。
後から聞いた話ですが、前日に私が作業を行なっていた場所では、誰もいない空間に向けて小さな子供が笑いかける、やたらとその場所で怪我をする職員が多いなど、不気味な噂が立っていたようです。
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