あるマンションで起きていること
投稿者:take (96)
仕事関係で付き合いのあるKくんから聞いた話です。
私より十歳近く年下で、まだ二十代で独身ですが、結構稼ぎがよく、単身者用の安い物件ではなく、ファミリー向けのマンションに住んでいます。
ただ、高齢者がいる家族も少なくないようで。中には認知症の方もいるようです。夜中に徘徊し、他人の部屋のドアノブを回す、大声で騒ぐ、他人のポストを開けようとする等々、たまにご近所トラブルが起きているらしいです。
ある夜、Kくんは物音で目覚めました。
廊下側の窓に設置された防犯面格子を、硬いもので叩いているような音です。
時刻は午前二時過ぎ、ついにウチにもきたか、と思ったそうです。
しばらく我慢していましたが、あまりに長く続くので、ベッドから出て玄関まで行きました。
まだ音は聞こえていて、部屋の前にいるのは間違いないようです。
相手はご老人、さてどう対処しようかと思いつつドアを開けると、
「あれ?」
そこには誰もいません。ドアを開ける直前まで音がしていたので、隠れるひまはないはずです。
釈然としないまま、その夜は終わったそうですが、それから時折、同様の出来事が起きるようになりました。
面格子を調べてもネジが緩んでいたり、劣化して軋んだりしている様子はありません。
質の悪い悪戯か、と監視カメラの設置も考えたのですが、
「映ったものが、ああやっぱり人だったとか動物だった、で済めばいいんですけど、もし……」
そこでKくんは言葉を飲み込みました。
「でね、思ったんです。そのマンションで認知症患者の仕業だと思われているうちの何件かは、実際はべつのナニかだってことがあるんでしょうかね」
引き攣った笑みのKくんに、私は、
「そういうこともあるのかもしれないね」
と、頷くしかありませんでした。
Kくんはいま、引越しを検討しているそうです。
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