プレハブ小屋の怪
投稿者:take (96)
私が幼稚園に通っていた頃の話です。家から少し離れた空き地に、打ち捨てられたままのプレハブ小屋がありました。
子供たちは「お化け小屋」と呼んで近づきませんでしたが、いつも一緒に遊んでいるHくんとふたりで「行こうか」と探検気分で出かけました。
中に入ると木材や壊れた工具や鉄パイプなどが散乱して、足の踏み場もありません。階段があったので、ふたりで上り、二階の窓から外を覗いて「あれ?」と声を上げました。住宅地の中にある空き地のはずなのに、周囲は広い草原で遠くに山々が連なっている、見えるはずのない風景が広がっていたのです。
「おかしいねー」とふたりで言い合っていましたが、私はこのプレハブ小屋に二階が無かったことに気づきました。はっとしてふりかえると、階段の辺りがぼんやりと黒い霧に覆われているように見えました。
このままだと出られなくなる、と感じた私は面白がっているHくんを引っ張って階段を降り、プレハブ小屋から出ました。それから二度とそこへは行きませんでしたが、まもなく小屋は取り壊され、駐車場になりました。
いまでもHくんとは付き合いがありますが、そのときのことを話すと「遊んだ記憶はあるけど二階なんてあったっけ?」と、よく覚えていないようです。私の記憶違いなのか、Hくんが忘れているだけなのか、もしあの小屋にもう少し長く滞在していたら本当に出られなくなったのか……不思議な思い出です。
ご無事で良かったです。
↑その通りです。