違和感

私には、Nさんという２０代後半の知人の男性がいて、よく飲みに行く仲なのだが、このNさん
　
とにかく霊感が強いらしい。

どのくらい霊感が強いかというと、日常生活で人と霊の区別がつかないくらいはっきりと見えてし

まうのだという。今から話す話はそんなNさんが20代前半の時に体験した話だ。

Nさんは当時地元では割とヤンチャをしているほうで、あった。

まだ蝉の鳴き声が絶えない真夏の時期にNさんを含めて7人の男女で、都内で有名な心霊スポット

に行くことになった。　簡潔に説明するとそこは城跡で、当時その城内で大量殺戮があったといわ

れているとても惨劇があった場所だ。

　7人という大人数なので車二台で向かうことにした。

着いた時には辺りは真っ暗闇に包まれていて、それなりの雰囲気はあった。

皆車を降りていざ行こうという時にNさんが、

「俺はいいや」

と言い出した。

すると男友達の一人のA男が

「え？いかないの？お前見えるっていうから行ってほしんだよなぁ、、、ていうかこんな真っ暗

　闇で車の中で一人で待っている方が怖いでしょ！」

と不満げに言った。しかしNさんは呆れた口調で

「あのなぁ、普段から見えてるからこそできる限り見たくないんだよ」

そうだ。別にNさんから誘って行こうと言ったわけではなく、なんならNさんは始めは断っていた

が無理やり連れてこられた感じだった。

「第一ここめちゃくちゃ気持ち悪りぃぞ？行かなくてもわかるわ俺」

と外をきょろきょろしながらNさんは言う。

仕方なくNさんをおいて他6人は行くことにした。

皆が行ってから10分、20分くらいたった頃だろうか。助手席でNさんが少しでも気を紛らわせよ

うとスマートフォンをいじっていると、不意に前方に何かが映ったのが分かった。

もう皆戻ってきたのかと思い、前方に目をやると、Nさんが乗っている車から数メートル離れて

いる城跡へと昇るための石段の近くに、鮮やかな着物を着ている女がはっきりと見えた。

しかし、すぐにNさんは数メートル先にいる女がこの世の者。それは着物だったからでも何でも