これは私の曽祖父の親の話です。
私の家は室町時代から続く古い家でした。
豪農と言われる家柄だったようですが、江戸時代の終わり頃、その家に一人の男児が生まれました。私の曽祖父の父親にあたる人ですが、様々な逸話が残ってる方でした。勘が異常に鋭く、そして何より、人以外のいわゆる妖子というものに好かれた人だったらしいです。
それがわかる逸話が、この吉太郎(仮名)さんは大変な賭博好きで、毎晩のように賭博をしに行くほどだったらしいのですが、どーゆうわけかこの吉太郎さん、負けることがなく連戦連勝だった、ということです。子供と嫁と使用人合わせて15人、家業と賭博とで養っていたのですから、周りからは何か憑いてるのかという噂をされていたそうです。
そんな吉太郎さんが狐憑きと更に噂がたったのが、ある晩いつも通り賭博から吉太郎さんが、供を連れて家路につくと、うっかり提灯を落としてしまい、困っているとどこからともなく、灯が一つ二つ現れだした、という出来事でした。そう、それはいわゆる、狐火と呼ばれるものでした。
そして、家路の道まで示してくれたそうですから、お供も吉太郎さんもありがたがりつつ、驚いたそうです。
そんな話が出ると中には気持ち悪がる人たちも現れ、特に、博打が異常に強かった吉太郎さんは狐憑きの化け物と呼ばれるようになっていったそうです。
まあ恨みや妬みもあったのでしょうが、お嫁さんや家族は心配し、賭博に出かけるのを止めたりもしていたようです。しかし賭博好きの吉太郎さんは制止も聞かず。とうとうある日、いつも通り出かけた吉太郎さんは、何者かに刀で切り殺されてしまいました。
心配で眠れない吉太郎さんのお嫁さんが、明け方「帰ったぞ」の声を聞き戸を開けてみると、そこには誰もおらず、霧の中に一匹の狐が佇んでいたそうです
吉太郎さんの死を知らせにきたのか、本人が狐に化身したのかは定かではありませんが、とても仲の良い夫婦で家族思いだったと語り継がれている吉太郎さんは死んでも家族の元に帰ろうとしたのではないかといまでも逸話が残っています。
これが、私の曽祖父の両親の、不思議で少し悲しい話です。
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