誰もいないはずなのに
投稿者:ノノ (5)
「あの子誰なの?」
「ミホも見たよね?」
「捻挫とか帯状疱疹はあの子のせいなの?」
「これからどうすればいいの?」
ミホとしては、幽霊を見ることはめずらしいことではないらしく、とにかく私の目にもしっかり女の子の霊が見えたことにホッとしていました。
ミホは「とりあえず調べてみよう。教室は1週間は休もう。」と言いました。私の帯状疱疹もあったので、教室をお休みにして、私とミホは幼なじみのノリで幽霊について、調べ始めました。
私は、帯状疱疹をしっかり治すためには休んだ方がよいので、休養をすることにしました。不動産屋さんにはミホが質問をしに行ってくれました。ミホの言い出したら聞かない頑固さが功を奏したのか、言い渋る店長から、こんな情報を聞き出してきてくれました。
やはり、約15年前に、あの教室では、女子高校生の自殺があったのだそうです。格安物件だったのも、自殺があったことが理由でした。自殺の後、何回も契約者が代わっているし、すでに法律で定められた3年を経過しているため、自殺があったことの告知義務はなくなっているのだそうです。
およそ15年前、その物件は学習塾でした。塾に通う女子高生が、授業を終えた教室に忍びこみ、深夜にひとりで首を吊ってしまったのだそうです。遺書も残されておらず、自殺の原因は定かではありませんでした。ただ、その女子高生がなぜか塾の合鍵を持っていたことから、塾の講師との恋愛も噂されたということです。しかし、相手の塾講師は、女子高生の自殺の前にはすでに塾を辞め、行方がわからなくなっていたのだそうです。
「でもどうして、私たちに嫌なことしたんだろう?」とミホに聞くと、
「捻挫とか帯状疱疹はあの子のせいかどうかはわからないよ。でも、幼稚園クラスでみんなが泣くようになったのは、あの子から出る不幸そうな雰囲気を感じたからだと思う。」
とのことでした。
これから、どうするか、ミホと真剣に話し合った結果「除霊をする」ということになりました。ミホが見たところ、あの女子高生の霊はタチが悪くないらしく、丁寧に除霊をすれば、成仏できるというのです。
ミホは、半日かけて、教室を掃き清めたり、塩を盛ったり、お札を貼ったりしてくれました。
その後、教室を再開すると、霊感のない私でもわかるほど、教室の雰囲気が明るくなっていました。そして、幼稚園クラスの子どもたちが泣くこともなくなりました。
ただ、ミホが新しく壁の上の方に貼ってくれたお札は、漢字と不思議な図形が書かれ、異様な雰囲気を放っています。見慣れてしまえば、気になりませんが、見学に来る方には幽霊のことを説明するわけにもいかないので、そこだけは少し困っています。
なんだかんだ友人のおかげで心霊現象が止まったから良かったです。