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呪い・祟り

ノノさんによる呪い・祟りにまつわる怖い話の投稿です

シオリちゃんの無念が晴れますように
長編 2022/08/27 12:29 4,898view
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これは、会社の同僚のA子から聞いた話です。
A子は、ある地方の小さな町の出身です。その地域では、都会ほど遊ぶところがなかったためか、小中学生時代には、いじめが当たり前のようにあったのだそうです。残念なことに、親の代から、いじめは当たり前で、大人たちにも「できない子、みそっかすはいじめられて仕方がない」という考えが浸透していて、一度ターゲットになると逃れることは難しかったのだそうです。

その地域では、小学校も中学校も一つしかなく、ほぼ同じ同じメンバーで過ごすことになりますが、小学校2年生から、中学の卒業までの長い間いじめられていたシオリちゃん(仮名)という女の子がいました。

全員がシオリちゃんにひどいいじめをしていたわけではなく、執拗ないじめをしていたのは3人でした。その主犯格の女子は、いじめが生きがいのような性格で、周囲も苦々しく思っていました。しかし、その女子の父親が多くの大人が勤め先でもある地元の大きな会社の若社長であるため、誰も逆らうことができませんでした。

もし、暴力などがあれば、さすがに教師や親たちもとめたかもしれませんが、シオリちゃんへのいじめは、言葉によるものでした。「なんか臭くない? シオリのにおいじゃない?」とか「シオリってぜんぜんきれいじゃないよね」といったシオリちゃんの名前をネタにしたセリフを聞こえるように言うのがいじめのパターンでした。

シオリちゃんはとても真面目で優しい子だったので、親にも先生にも相談せずに耐え続けました。中学に入学した頃には、学校でもシオリちゃんの声を聞くこともないほど、シオリちゃんは諦めきったように静かな子になっていました。

女子3人によるいじめは、中学の頃には、さすがにおさまる時期もありましたが、少しでもシオリちゃんが話したり笑ったりすると「シオリなのにしゃべった」とか「シオリなのに笑った」とか言うことは決してやめることがありませんでした。悲しいことに、シオリちゃんが笑顔を取り戻すことは叶いませんでした。

高校は、みんなバラバラのところに進学します。頭がよかったシオリちゃんはいじめっ子の誰もいない進学校に入学しました。A子もたまたま同じ学校に入ることができました。同じ中学校からその進学校に行ったのは、シオリちゃんとA子だけでした。

A子は、シオリちゃんがいじめの対象になる前に何度か遊んだこともあり、小学校、中学校と内心ではシオリちゃんを心配していました。だから、高校からシオリちゃんと仲良くできるかな、と思ったのですが、その願いも虚しく、シオリちゃんは明らかにA子を避けていました。

そして、高校は2年の夏休み明け、シオリちゃんは高校を辞めてしまったのです。A子はシオリちゃんと同じクラスではなかったのですが、同じクラスの友人によると、先生がシオリちゃんからの手紙を読んでくれたのだそうです。

その手紙はこんな内容でした。
「私が高校をやめるのはみなさんのせいではありません。どうしても過去のできごとが忘れられず、学校という枠組みがつらいだけです。みなさんは高校生活を楽しんでください。」

それを聞いて、A子は、小中学校でのいじめのせいだ、とわかりました。いじめを止められなかった罪の意識はあったものの、自分の生活が忙しくて、シオリちゃんのことはいつしか遠い存在になってしまいました。

そして、A子が就職して上京していた頃、もう一度シオリちゃんのことを思い出すことになります。それは、シオリちゃんの訃報でした。シオリちゃんは、高校中退以来、家で過ごしていましたが、実は何度も自殺未遂や入院を繰り返していたのだそうです。そして、22歳の春に、自殺未遂ではなく、本当に命を落としてしまったのです。

この事実は、シオリちゃんのお母さんが、生前に遊んだ思い出のあるA子にだけは伝えてくれれたのですが、近所にも伏せられていました。A子は、いじめのことを本当に後悔して、今後の人生では絶対にいじめを傍観しないことを誓いました。

不思議なできごとがあったのは、ここからです。シオリちゃんのいじめの主犯格だった女子は、田舎にはよくあるように18歳で結婚して子どもも産んでいました。

その子どもは女の子でしたが、3歳になった頃から母親である元いじめっ子に懐かなくなってしまったそうです。そして、夜になると寝言で、こんなことを言うのだそうです。

「お母さんが昔したことは忘れないよ」

一度や二度なら変な夢を見ただけと思うところですが、あまりにおかしいので、冷徹な元いじめっ子も、シオリちゃんのことを思いださざるをえませんでした。
 
さらに、こんな寝言まで言うようになりました。

「あんただけ幸せになることは許さない」

そして、普段は連絡を取らないA子に電話があったかかってきて、相談してきました。「シオリに謝りたいから、連絡先を教えてほしい」

そこで、A子は、シオリちゃんがすでに亡くなっていることを伝えました。A子は今こそシオリちゃんの恨みを晴らす時だと思って、当時は言えなかったいじめへの文句やいかに卑怯なことをしたかを思い切って言いました。さすがにもともといじめっ子も、言い返すことなく聞いていたそうです。

驚いたことに、シオリちゃんが亡くなった命日と、いじめっ子の娘がうわ言を言うようになった時期とピッタリ重なっていました。

今になって「うちの子に霊がとりついちゃった。どうしたらいいんだろう」と泣き言を言ういじめっ子にA子は冷たく言い放ちました。

「あんたがしたことが返ってきたんでしょう」と。

それでも、シオリちゃんが成仏できないことが心配だったA子は、お墓参りをして、できるだけ安らかに眠れるように、A子自身も何もできなかったことを後悔していることやお詫びの気持ちを懸命に語りかけました。

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コメント(3)
  • いじめた方は一瞬で忘れるけど、された方は一生忘れられないしシオリちゃんの様に苦しみ続けて命を絶ってしまう事もある。
    いじめた本人ではなく大切な家族に因果が出来て、初めて自分の愚かさとやった事の大きさに気づくんだろな。

    2022/08/27/17:17
  • 世の中には謝って済む事と済まない事がありますよね。シオリさんの事件は当然後者です。

    2022/08/27/22:56
  • そもそもいじめを大人が無視するところがあるなんて…

    2022/08/29/17:35

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