赤錆を含む水
投稿者:林檎杏美 (3)
僕が大学生となり初めて一人暮らしを始めたときのことだ。
お金が無かったので、家賃の安い家を借りた。
まず大学自体が田舎にあるので、周囲に点在する家の家賃は安いところが多かったのだが、その中でも一際目立つほどの安い家を見つけた。築50年ほどのぼろアパートで、住んでいる人は今は誰もおらず長く使われていないという話だった。それで家賃は1万2000円。僕にとっては破格の値段設定だった。
試しに家の内見をしてみたが築50年の割には、床や天井などが腐っているわけでも無いので、使用感が気にならない人であれば何も問題は無い物件だった。
しかし、大家さんから一つだけ注意されたことがあった。
それは『長く家を使用していないので、蛇口から出る水が最初は汚いかも知れ無いから、それを流してから使用するように』とのことだった。
僕は恐らく、下水のパイプが錆びてその錆が流れて出てしまうことだと思っていた。
それなら、小学校の時に経験しているので対処法も知っていた僕は何も問題ないと思い、その夜にお風呂をわかすことにした。
風呂場へ行き、蛇口をひねる。すると、案の定長く使われていないと言えるほど大量の赤錆が流れてきた。
結構量が多いと引きつつも、流していくが様子がおかしかった。
いくら流しても、綺麗な水が出てこないのだ。それどころか、水に含まれる赤錆の濃度が増していく。
気味悪がっていたその時だった、蛇口から黒い塊がぼろっと流れ出てきたのだ。
よく見ると、それは黒い髪の毛の塊だったのである。
僕は気持ち悪くなり、その日は一切蛇口をひねらなかった。そして、直ぐにその家を解約して別の家へと引っ越した。
後に知ったが、その家は前に住んでいた住人が風呂場で命を落としたことがあるという事が分かった。
その家は事故物件だったのだ。
※コメントは承認制のため反映まで時間がかかる場合があります。