影裏の老人
投稿者:林檎杏美 (3)
短編
2022/11/01
17:52
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僕がまだ小学生に入った位の小さかった頃から起こった不思議な話である。
僕がある時、自転車で近くの駄菓子屋に行った時の事だった。母親から貰ったお小遣いで好きなお菓子を豪遊して上機嫌だった僕はその帰りに事故に遭った。
幸い、大きな事故にならずに済んだが、小さい頃の僕は母親に怒られるのが嫌だったのか、運転手に「誰にも言わないで欲しい」とお願いすると、すんなりと運転手は承諾し、車を走らせてどこかへ行ってしまった。
残ったぼろぼろの自転車をどうしようかと歩いていたとき、背後に杖をついて灰色の帽子をかぶったお爺さんが現れたのだ。お爺さんは僕に向かって話しかけてきた。
「お母さんに言わなくて良いのかい?」
その言葉に対して、僕は咄嗟に「いいです!!」とだけ言って逃げた。
あれ以来、謎のお爺さんは僕の後ろに現れるようになった。自販機のおつり入れのお金をネコババしようとしたとき、図書館で勉強をサボろうとしたとき、友達と遊んでいて帰りが遅くなるとき、いつも同じお爺さんが背後に現れる。
しかし数年が経って、卑しい考えを捨てた頃からそのお爺さんは現れなくなった。
もしかしたら、あのお爺さんは僕の中に居た良心だったのかも知れない。
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