その日の夜の話
投稿者:オスカー (1)
短編
2022/11/06
11:04
891view
これは、母が介護士として田舎のとある病院で働いていた時の話です。
母の受け持ち患者様の中に、もう死を待つだけのおばあさんがいました。
もともと家族が少ないのか、それとも家族となにかあったのかはわかりませんが、
そのおばあさんを訪ねて来る人はほとんどいませんでした。
母は身寄りのなさそうなそのおばあさんを不憫に思い、
仕事ではありますが、懸命に、丁寧にお世話をしていました。
そして、おばあさんはその時を迎えました。
母はその日夜勤のシフトで、仕事に入った時にはすでに、
おばあさんは息を引き取った後でした。
病院ではよくあることではありますが、担当していた患者様が亡くなることは
やはり寂しいことだと感じていたそうです。
そしてその夜、仮眠をとるためにその部屋のベッドで横になっていたときのこと。
その部屋しか空いてなかったそうですが、
もうこの時点でおばあさんが現れるのは想像に難くないとは思いますが・・・
おばあさんが寝ていたベッドにはカーテンがかかっていたのですが、
そのカーテンに、明らかにそのおばあさんとわかる影がふわぁっと浮きあがるように映りました。
母は、「あ、おばあさんだ」とはっきり認識したそうですが、
不思議と恐怖はなく、むしろ心が温かくなったそうです。
後に母が言うには、「何か言葉を発したわけじゃないけど、あれはお礼を言いに
来てくれたに違いない」とのことです。
前のページ
1/1
この話は怖かったですか?
怖いに投票する 5票
ええ話ですね。