アパートの階段で…
投稿者:ぴ (414)
身分証明書が入っているかもしれないとその巾着袋を探ったけど、中には金目のものも身分証明書も入っていませんでした。
入っていたのは1枚の写真なのです。
その写真にはさきほど部屋に入っていったおじいさんと、さきほど部屋から出てきた若い女性が笑顔で写っているものでした。
もう一度男性がその部屋を訪ねて、巾着袋の中から出てきたこの写真を見せました。
そしたらびっくりした顔で、女性がその写真を見つめたのです。
そしてこれをどうしたかと聞かれたので、先ほど話した足の悪いおじいさんがあなたの部屋に入る前に持っていたものだと伝えました。
そしたら女性は青ざめてこういったのだそうです。
「おじいちゃんは十年以上前に死んでるのに…」それを聞いて、巾着袋を手渡した男性も鳥肌を立てました。
私は怖い話がとても苦手だったので、自分の住んでいるアパートであったらしいその話を聞いたときは、ぞくっとするものがありました。
その話を聞いて以来、夜遅くに階段を上り下りする度に、周囲を気にするようになりました。
そうして、その日も残業終わりにアパートに帰り着きました。
階段を昇っていたら、誰かが前から階段を下りてくる音が聞こえてきました。
あの怖い話を思い出して、私は心臓がドキドキするのを感じました。
もう完全に、誰かがすぐそこまで来ている足音はしたのです。
だから、相手が誰なのか身構えました。
足の悪いおじいさんだったらどうしようととてつもなく怖かったです。
そろそろ鉢合わせするかもと身構えていたところで、ありえないことが起こりました。
急にピタッと聞こえていた靴音が止んだのです。
さっきまで上からカンカンと高い靴音がしていたのに、まるで私に会う寸前に消えてしまったかのように、音がしなくなりました。
そして誰にも鉢合わせすることなく、部屋にまで辿り着いたのです。
部屋に帰ったときの私の動揺はすごかったです。
手足は小刻みに震えていたし、心臓は早鐘のように鳴っていました。
同じアパートの住人が途中の階に下りて、部屋に入ったとしたらそれまでの靴音やドアの開閉音が聞こえるはずなのです。
でもその音もありませんでした。
本当に私に会う寸前に、消えてしまったかのように、音がしなくなったのでした。
私は恐怖を感じてすぐに彼氏に電話しました。
先ほどの話をして、アパートに何か出るかもしれないと言ったのです。
だけど、彼は笑って取り合ってくれず、私はすごく不機嫌になりました。
こんなに怖がっているのに、心配もしてくれない彼に苛立ちを感じたのです。
このようなことがあり、アパートの階段を怖がりながら生活していたのですが、ある出来事がありました。
怖いです。ひきこまれました。