観覧車から覗く人影
投稿者:ぴ (414)
朝からとてもいい天気でした。
空は澄み渡った綺麗な青で、家族みんなでうきうきしながら家を出ました。
「良かったね。晴れてー!」と母とにこにこ笑い合って、妹と一緒に「何乗ろうか」なんて話しました。
私と妹は5歳くらい年が離れており、妹はずっと落ち着かないように車の中をごぞごぞしていました。
とにかくこれから行くテーマパークに思いを馳せ、とても楽しみにしていたのです。
私たち家族は夏休みの真っただ中に、遊園地に行きました。
家から少し遠かったのですが、せっかくの夏休みに思い出を作らないと!と珍しく父が計画したと聞きます。
私は初めて行く遊園地をすごく楽しみにしていて、まだかまだかとずっと車で催促していました。
そんなに楽しみにしていた遊園地だったのに、まさか天候が悪くなるとは思いもよらなかったです。
遊園地に着いた頃から雲行きが怪しくなってきて、急に空が陰り始めました。
そして乗り物にいくつか乗っている間に一気に天候は悪くなり、真っ暗になってきて、突然雨が降り出したのでした。
私たち家族は慌てて、近くの屋根があるお店まで避難しました。
外はものすごく暗くて、私は母の手をしっかり握りました。
外は真っ暗で土砂降り。
父も母もとても困っているように見えました。
父に抱っこされた妹はどうやら雨をきゃっきゃ喜んでいるようでした。
雨だと乗り物にいろいろと乗れないことにがっかりするよりも、土砂降りの音を楽しんでいるようです。
私はせっかく遊園地に来たのにと、とてもがっかりして、一人でぶらぶらと屋内を見回り始めました。
このまま雨が止まなかったら、乗りたかった乗り物に乗れずに家に帰るのかなとすごく残念に思いました。
みんなが外を伺っている間に、私は店の中を一人で見て歩いていたのです。
そしたらお店の一角に気になるものを見つけました。
それはピエロの人形なのです。
何の変哲もないただのピエロの人形なのですが、なぜか私は吸い込まれるようにしてそれを見ていました。
私にはなぜかその人形がすごく印象に残ったのです。
紫の派手な服を着たピエロの人形を指さして、母に「これが欲しい」とおねだりしました。
母は全然覚えていないらしいけど、私はなぜかそれが記憶に残っているのです。
結局買ってもらえなくて、しょんぼりしました。
土砂降りだった雨が凄みを増してきて、私はふと外にある観覧車が目に留まったのです。
この雨の中なのに、観覧車がずっとゆっくりと動いており、私はそれをじっと見ていました。
最初は誰も乗っていない観覧車がただ回っているだけと思いましたが、じっと見ていたら観覧車の中に人影が見えます。
※コメントは承認制のため反映まで時間がかかる場合があります。