誰も使わないトイレ

私が通っていた小学校は古い建物で、コンクリート製の冷たい造りをしていました。生徒達のクラスがある教室棟と特別教室棟の2種類あり、生徒達がよく行き来するのは渡り廊下がある1〜2階までで、3階には授業がある時以外ほとんど誰も行くことがありませんでした。

ある日のお昼休み、トイレに行きたくなった私は、生徒達で混雑しているのを待っているのが面倒になり、誰もいない特別教室棟の3階のトイレを使うことにしました。生徒も先生も誰もいない3階はとても静かで、自分だけの足音が響き、少し不気味さは感じていました。

3つ並んだ個室のうち1番入口に近い個室を選び、鍵を閉めしゃがみますと、ドアの下は若干隙間が空いているので、ギリギリ通路の床が見えるのです。そこで足音と共に人影が入口側から奥の個室の方へすーっと通っていくのが見えました。

自分以外にもやっぱり同じ考えをする人がいて、面倒だけどわざわざ人がいない3階のトイレを使いに来る人もいるのだなーとその時は思いましたが、いくら待ってみても扉が閉まる音が聞こえてこないのです。確かに人影は自分の入っている個室よりも奥に向かって通っていったのを見たのに、個室には入らず…なんてことあるんだろうか？と疑問に思いましたが、用を済ませ外に出るとその疑問は一気に不気味さへと変わりました。

自分が今でた個室よりも奥の2つの個室。そのどちらも扉は開いており、通路にもその個室の中にも何処にも人は入っていなかったのです。

気のせいかもしれないと思えばそれまででしたが、ではあの時みた人影と足音はいったい…？

そう思った瞬間一気に怖くなり、急いで教室棟へ戻りました。友人にその話しをしても気のせいだよと誰も信じてはくれませんでしたが、完全に怖くなってしまった私はこれ以降、特別教室棟のトイレを使うことはありませんでした。

不思議で不気味な体験談ですが、大人になってからもし似たような体験をしたならば、こう思う人も少なくないのではないでしょうか。

自分以外には誰もいないトイレの隙間から見えた人影。

やはり誰もいなかったのではなく、本当に誰かがいたとしたら…｡