研究棟の女の子
投稿者:ミドリ (1)
短編
2022/10/01
22:19
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私が通っていた大学には、古い時計塔があり、その下に研究棟があります。私の指導教官の研究室がその研究棟にあったので、アシスタントをしていた当時、週に2回は研究室に居ました。金曜日は毎週夜8時まで大学院の授業があり、暗い研究棟の廊下を歩くのが怖くていつも速足で歩いていました。
ある金曜日、授業が終わって先生も帰り、研究室の片づけをして部屋を出た後、廊下を歩いていてふと人の気配を感じました。私は怖かったのでなるべくその方向は見ないようにして帰ろうとしましたが、角を曲がった瞬間、一瞬だけ後ろを確認してしまいました。はっきりとは見えなかったのですが、ワンピース姿の普段見慣れない女性がスッと通ったようでした。
後日、私の指導教官のもとへ、本の出版社の編集の方が打ち合わせに来ました。私はアシスタントとしてお茶を出したりしていましたが、その方が帰るとき、ふと研究室の前の角を見つめて言いました。「僕、見えるんですよね、よく。ここの角にも女の子がたまにいますよ。」
その方は手首にお数珠のようなブレスレットをつけていて、冗談で話している様子ではありませんでした。それから、卒業してその研究棟に夜行くことはなくなり、今は改修工事も済んで奇麗になっています。
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