私が唯一の目撃者
投稿者:ぴ (414)
その年の花火大会は本当に美しく、私の周辺でも感動して泣いている人がいるくらいでした。
とても記憶に残るいい花火大会だったらしいです。
ただ私は残念ながらその年の花火大会をよく覚えていません。
それどころではないことが起こったからです。
その記憶は結構なトラウマとして、たまに脳裏を過ることがあります。
その話をしたいと思います。
私の地元の花火大会は、いつもはこじんまりとしたもので、海の近くの別の場所で開催されていました。
ただその年はなぜか港のほうで花火大会が開催されることになり、友達に誘われて花火大会に向かったのです。
開催場所に着くと周囲はすでに薄暗くなっており、夜店は賑わいを見せていました。
ワイワイと大人数で集まっている浴衣集団とか、同じ年代くらいの人たちがたくさん来ていました。
私たちはまずはいつものようにお腹を満たそうと、たこ焼きを食べ、はし焼きを片手に定番のポテトや綿菓子でお祭りを味わい、最後にかき氷を食べました。
お腹は満腹になり、おみやげに玉子焼を購入して満足しました。
あとは輪投げやくじ引きをして景品をもらいました。
大したものは当たらなかったけど、すごく楽しかったし、友達と久しぶりにお祭りではしゃいだ気がしました。
こうやって楽しく過ごしていたのです。
けれど私は一組のカップルが目に入りました。
特に目立つカップルってわけじゃなかったです。
私服姿の男の人に髪の長い女の人がよりかかるようにして歩いており、男の人はしきりに肩を揉んでいるように見えました。
肩でも凝っているのかずっと肩を回していて、すこぶる居心地が悪そうでした。
隣の彼女らしき人があきらかにその彼の腕を組んでのしかかるようにしてよりかかっているのです。
明らかに彼女のせいで肩が重いんじゃないかと私は思いました。
けれど男性は彼女に一言も注意することなく、彼女を押しやることもしないのです。
すごく優しい彼氏だななんて思っていました。
しかし、次の瞬間彼が「お」と言って、前に向かって手を振ったのです。
手を挙げたら前から別の女性が走ってきて、さきほどまでよりかかっていた彼女を押しのけて彼と腕を組みました。
そしてその女性はまるで我が物顔で彼の隣を横どりして、「お待たせ~」と言うのです。
私はこの一連のやり取りを見て、ひぃって思いましたね。
これから始まる修羅場を予想して、びくびくしたのです。
さきほどまで自分がいた場所を横取りされ、押しのけられた彼女は明らかに怒り心頭のようでした。
見るからに怒っていて、私から見ても怖かったです。
首を絞めていた女性は元カノで生霊だったのでは?