何のための侵入だったのか

インターホンも鳴らさず、無言で侵入してきたAさんは
私達の姿を見て咄嗟に「ガムテープを貸して欲しい」と声を掛けてきました。
絶対にそんな訳ない、侵入理由はそんな理由じゃないと私も義父も感じました。

早く出て行って欲しくて、直ぐにガムテープを用意し
義父が私達を守るように立ってくれた、その背中越しにAさんへガムテープを渡しました。

「使いかけなので、返さなくても良いです。
差し上げるので、そのままお使い下さい。」と伝え、Aさんを見送りました。

Aさんが玄関から出てすぐに鍵を施錠し、Aさんとのこれまでの事を義父にも話していると
また玄関からガチャンという音が聞こえてきました。
すぐにAさんが返しにきたのだと気付きました。

私と義父はバレているのは承知の上で、居留守をつかう事にし息を潜めていましたが、
鍵が締まっていて、開くことのない玄関のドアを何度か開けようとガチャガチャとしているAさんに
執念のようなものを感じ、恐怖と気持ち悪さで生きた心地がしなかったです。

その後は、帰宅した夫に義父は叱られ、警察にも相談して
引越しまでの間、パトロールの際にマンションの前を通ってもらう事にしました。

パトロールがあるから、引越しまでAさんとは会う事もなく、無事越すことが出来ました。

あの日、偶然家に侵入してきたのか・・。
それとも前から私が気付かないだけで何度か侵入は試みていたのか。
侵入した目的は何だったのか。

今でも真相は分かりませんが、これは私の身に起こった一番怖い体験でした。