姥捨山
投稿者:九遠 (1)
「この辺の人かな?声かけてみる?」
Aは半笑いで僕にどうするか訊ねてきましたが、僕としてはあまり知らない大人に声はかけない方がいいと思っていました。
いくら祖父の地元とは言え、変質者の類なら子供の僕らは襲われたら無力なのです。
ただ、隠し切れないAの好奇心の前にそんな否定的な意見が言える筈もなく、僕は「任せる」と卑怯な回答をしました。
そしたらAは大きく深呼吸した後、
「何してるんですかー」
と、本当に声を掛けました。
隣で大声を出された僕とCは渋い顔をして耳を塞ぎます。
すると、声が届いたのか、人影の動きがピタリと止み、遠目からでもこっちを見ている事が分かりました。
「お、気づいたかな」
「こっち見てるね」
人影がこっちを見てから僕達は生唾を呑む様に静寂な時の流れに身を任せていました。
どちらも何をするでもなく、ただ互いが距離を保ったままじっと佇むという奇妙な行動をしており、ある意味で二者間が阿吽の呼吸だったと言えます。
そして、またしてもそんな静寂を崩したのはBの発言でした。
Bは僕のシャツの裾をグイと引っ張ると、
「ねえ、あそこにもいる」
と人影が居る方角とは別の方角を指差します。
AとCもBの話を聞いていたのか、僕と同じタイミングで振り向くと、その先に同じような黒い人影がじっと佇んでこっちの様子をうかがっている姿を確認しました。
まったく同じ様なシルエットが二カ所から僕達を見張っている。
そんな謂れもない行動を受けて、僕達は冷や汗を浮かべ始めました。
「……なあ、俺ら何かしたんかな?」
流石に威圧されたのかAが弱腰に僕に耳打ちします。
僕も似たようなもので、何故あの人影が黙ってこっちを見続けているのか意味が分からず、内心では警戒心を働かせていました。
「もしかしたらここって入っちゃいけないんじゃ……?」
一先ず、可能性の一つとして立入禁止とか私有地を考え、すぐに撤退する事をAに伝えると、
「親父に怒られるのもアレだしな、戻ろうか」
と素直に従ってくれました。
流石のAもまだまだ父親の説教には敵わないと見たのか、くるりと翻すと「帰るぞー」とBの頭をポンと叩き、僕はCと並んでA達の後ろを歩きます。
ただ、人影も何故か同じ様に僕達の歩調に合わせてついてくるのです。
そのことに気付いたのはAも同じで、だんだんと歩調が速くなっていくのが分かりました。
ちょっと長かったけど読み応えあって面白かったです
埼玉に姥捨山あるって話を思い出した
夢に出そう
あばばばばばばばば
長野県に姨捨って地名あるよ…
ググってみてください