姥捨山
投稿者:九遠 (1)
ですが、そんなお気楽な考えもBの一言で潰える事となりました。
「ねえ、あの人誰?」
突如、Bが進行方向から二時くらいの方角を指差してそんな事を言ったのです。
思わず僕は「誰」という部分に反応して固まり、Aも「何言ってんだ山の中だぞ」みたいな顔でBが指し示す方角に顔を向けていました。
ただ、その方角には人影らしいものも無く、その場はBの見間違いだと結論づけて再び歩き出します。
しかし、少しすればまたBが「ねえ、あそこ、人がいるよ」と明後日の方角を指差すので、僕達はその都度足を止めてはBが言う人影を探すのです。
四方八方360度見渡しても人っ子一人居ませんが、何やら強い悪寒が全方位から突き刺してくる様な感覚を覚え、僕は口を結んだまま動く事が出来ませんでした。
「B、ほんまに見たの?」
「嘘じゃないもん」
立て続けに虚言に付き合わされたと思ったのか、AはBにやや怒り気味に問い質します。
ですが、本来気弱で素直なBはこの時に限っては、涙をにじませながらも強い姿勢で嘘じゃない事を主張するので、僕もAも次第に眉を八の字にして押し黙ってしまいました。
一方でCの方を見れば、何か一点を見つめて呆然と突っ立っていたので、僕は「何かあったの?」とCの横に並んで同じ方向を見ます。
その先は特に周辺と変わりない雑木林が広がるだけでしたが、一瞬、鴉の様な黒い影が横切ったのが見えました。
色こそ鴉のそれでしたが、一瞬ながら大きさは僕より大きく見えた気がしました。
それこそ中学生のAに並ぶ体格でしょうか。
それを経て、僕はあの黒い影がBが見たという「誰か」なのではと思い到り、すぐにAに教える事にしました。
「A君、あそこ、何か動いたよ」
「マジか」
僕が報告するとAは足早に隣に並んで僕が指差した方角を凝視します。
すると、直後に再び黒い何かの影がスッと木と木の間を移動したのが見えました。
それを目撃したAは「うおおお」と歓喜に近い声を上げ、僕もBに「本当にいたね」と話しかけ、頭を撫でました。
しかし、Bは僕に聞こえるかどうかの声量で「あっちにもいる」と親指をしゃぶり拗ねる様に俯くのです。
辛うじて聞き取った僕は思わず「え?」と声を漏らしますが、それを大きく遮る様にAが「居た居た居た!」と僕の肩を強く叩いてきました。
中学生の腕力で叩かれた僕は「痛い」と抗議の言葉を飛ばしましたが、Aはお構いなしに僕の肩を強引に引き寄せて同じ方向に体を向けさせます。
そのままAが強制的に向かせた先を見ると、数百メートルと離れた先、木々の間に人影らしき真っ黒なシルエットが佇んでいるのが見えました。
そのシルエットは僕達が見ているのを知ってか知らずか、小刻みに踊り始めます。
それを見て、僕達は思わずクスっと笑ってしまうのです。
ただ、どうして昼間なのにあんなに暗いのか。
というか、体全体が真っ黒なのか少し疑問に思っていました。
いくら日陰でも昼間にあそこまで真っ黒にはならないだろうと考えていましたが、陽気な踊りを目の当たりにしたらそんな事がどうでもよく思えたのです。
ちょっと長かったけど読み応えあって面白かったです
埼玉に姥捨山あるって話を思い出した
夢に出そう
あばばばばばばばば
長野県に姨捨って地名あるよ…
ググってみてください