鍵を失くした親子
投稿者:ぴ (414)
私はその日朝からボランティアをしていました。
よくあるゴミ拾いのボランティアでしたが、そこで私は真っ赤なスカートの小さな女の子に出会ったのです。
髪の毛はオカッパのような今時珍しいヘアスタイルで、お母さんらしき人と一緒にいました。
私はその子の近くでごみ拾いをしており、まだ小さいのにボランティアをしているその子のことは気にかかっていました。
お母さんとその子は最初はゴミ拾いをしているのかと思ったけど、途中で何かを探していることに気が付きました。
私は何か落としたのかと思って、「手伝いましょうか?」と声をかけたのです。
声をかけたら二人はびくっとあからさまに驚いてこっちを見ていました。
私はありがた迷惑だったかなと焦ったのですが、女の子のほうがこっちに近づいてきたのです。
そして私の腕を掴んで「見つけてほしい」と言いました。
そのときの女の子のひんやりした冷たすぎる手は今も記憶にこびり付いています。
二人が探していたのは、鍵だといいました。
何の鍵かまでは分からなかったけど、大事な鍵を落としてしまったみたいなのです。
私はゴミ拾いをしながら、二人が探している鍵も注意して探しました。
そしたら丁度花壇でごみを拾っているときに、その鍵を発見したのです。
今落としたと思えないような年季の入った錆びついた鍵で、これかどうか迷ったけど、とりあえず声をかけようとしたのです。
振り向いたら、すぐそこにあの女の子がいて心臓が止まるかと思うくらい驚きました。
その子は私からその鍵を受け取ると、「ありがとうお姉ちゃん」と言いました。
そしてパタパタ走って、お母さんのところにいきました。
お母さんは何も言わずに深々と私に頭を下げて、二人でその場から去っていきました。
親子が見えなくなったときに、はっとして私は近くの人に「さっきの親子って誰か知ってます?」と聞いてみたのです。
そしたら聞かれた人は「親子?」と不思議そうでした。
私が赤いスカートの女の子の話をしたけど「そんな人いました?」と首を傾げられたのです。
なんだか怖いので、その後も何人かに聞いてみたけど、私が見た親子を目撃した人は私以外には誰もいなかったです。
私はあの日もしかしたら見てはいけないものを見たかもしれないです。
見つけてほしいといわれて探した鍵…あれを渡さなかったらどうなっていたんだろうと少しだけ怖くなるときがあります。
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