Sからの電話
投稿者:ぴ (414)
きっかけはSからの電話でした。
学生時代から大の仲良しだった男友達のSから久しぶりに電話がありました。
県外で働くようになって、めっきり連絡を取ることが無くなった相手だったので、私はすごく嬉しくなってSと夜中まで電話をしたのです。
本当に楽しくて、嬉しくて、ついつい近々会いたいねなんて恋人みたいなことを言いました。
Sは一瞬声を詰まらせて、何か言いたげだったように思います。
けれど、楽しい時間はあっという間に過ぎて、そして電話を切ったのです。
数日後に私はまた話したくなって、Sに電話しました。
そしたら電話が繋がりません。
漠然とした不安に襲われて、私は懐かしい学生時代の友達に電話をかけました。
そして、Sが今車の事故で重体であることを知ったのです。
私は急遽仕事を休んで、Sの病院に向かったけど、着いた頃にはもう遅くてSは息を引き取った後でした。
私は悲しくて涙が止まらなかったです。
けれど最後の最後に話ができて良かったという話をしている途中で、Sのお母さんにおかしなことを言われました。
私が話していたという日時には、既にSは意識不明になっており、電話なんてできない状態だったというのです。
でも私の電話にはSからの着信履歴がしっかり残っていました。
最後まで辻褄は合わなかったです。
ICUに入っていた時間に私はSと電話したことになります。
本来あり得ない話ですが、Sのお母さんは最後に私と話したかったんじゃないかなと言っていました。
私は知らなかったけど、Sはずっと私のことが好きだったらしいです。
少しも感じたことがない想いで驚きました。
それを最後まで言えなくて、それが心残りだったのだろうとSのお母さんは言いました。
あの日、Sは私に何か言いたげだったことを思い出します。
もしSが死ぬと分かっていたら、私だってもっと言いたいことがたくさんありました。
すごく切なくて、後悔の想いはいっぱいです。
ただ最後に話せる時間を作ってもらえた奇跡にだけは感謝しています。
ご冥福をお祈り致します。