人を虐めちゃいけない理由

と言い放ちました。
あまりにも普段とかけ離れた言動に
面食らいましたが社交辞令で
愛想良く返事をすると、
満足したように部長は座席の方へと
ふんぞり返りました。

そうして何駅か共に部長と
同じ空間で過ごします。
ガタンゴトンと揺れる電車。
その中で部長は和やかに話しています。
中にはいじめられて自殺した人もいて
解放されて良かっただとか、

未練や愚痴を零します。

「私、いじめてきたやつの面は忘れませんよ。
もしここに乗ってきたら
ボコボコにしてやります。
虐めるようなやつは要らないですよね。
あの世にもこの世にも。」

部長は呑気に頷いていて、
それに同調するように
周りもまた能面のような顔で
うんうんと頷きます。
綺麗に笑みを浮かべています。
でも目が笑っていません。

みんなおそらく本気で頷いてるんだと思います。
そんな奴がいたら容赦はしない。
そういう笑みでした。

話に相槌を打って、
同調して、労わっている部長の姿に
この世での面影は残っていません。
本当に今までのが嘘のようです。
でも私は知っています。
あの子にはそんなことを
一切してなかったことを。
あの子を退職に追いやったのは
紛れもない部長で、誰よりもこの場で
迫害されるべき人物はあなただってことを。