黙祷に現れた謎の人物

私が小学生の時の話です。

私の小学校は戦時中酷く爆撃を受けた様で毎年夏休み前の終業式では1分間の黙祷をします。

黙祷と言っても小学生ですので1分も目を閉じて哀悼を捧げる事が出来ずふらふらと体を揺らしたり、人によっては歩き回る事もありました。

すぐに先生が止めに来て「ダメでしょ、ジッとしてなさい」と小声で注意されます。

私は大人しい性格なのでジッと黙祷する事が出来ました。

その年の夏休み前の終業式でも例年通り黙祷が行われました。

私は毎年のように目を閉じ哀悼の意を捧げます。

すると何処からともなくタッタッタと言う小走りで走る音が聞こえます。

まだ誰か動いているのかとこの時は気にも留めません。

しかし不思議な事に先生は足音の主を止める事も注意する事もしません。

足音は児童の列の間を通り抜ける様に走りピタリと私の隣で止まりました。

目を閉じているので隣にいる子の事は分かりません。

先生が早く来てくれる事を願いましたが一向にその気配はありません。

気味が悪くなり今隣に得体の知れないものが居ると恐怖しました。

すると手を触られました。