誘いの手
投稿者:新伝 (4)
子供はそこの木箱の蓋を壊して鍵を取り貯水庫の鍵を手に入れたのです。
子供は喉の乾きはピークに達しておりどうしても水が欲しく急いで貯水庫の鍵を開けて蓋をこじ開ける事に成功しました。
子供は貯水庫いっぱいに溜まった水を掬い上げて喉の乾きを潤しました。
無我夢中で貯水庫の水を飲んでいき喉の乾きを潤しました。
ですが、そこの貯水庫は深く大人でも落ちれば上がる事のなど到底出来そうにない程深い貯水庫でした。
子供はまだまだ水欲しさに貯水庫に身を乗り出したその時、子供の小さな体は貯水庫に吸い込まれるように落ちてしまいました。
子供は襲い来る水にもがき何とか貯水庫の縁に手を伸ばしましたが手は届く事はなくガリ、と掠めるだけで小さな体は見る見る内に貯水庫の中へと沈んでいってしまいました。
そこの貯水庫は一ヶ月しないと人が来る事はありません。
一方家に戻った親は子供がいない事に気づいていましたが村の子供達と遊びに出かけていると思い特に気にも止めていませんでした。
しかし子供は夕方になっても家に戻って来る事はなく夜になっても家に帰って来る事はありませんでした。
親は不審に思い村の子供達の家に回って歩きましたがむらの子供達は誰も親の子供とは遊んではいませんでした。
親は不安になり村の外の山まで子供を探して歩きましたが子供は見つかりません。
村にも子供がいなくなった事を伝えて共に探して貰いましたが夜遅くなっても子供を見つける事はできませんでした。
翌日も親はずっと子供を探して歩き回りましたが夕方、夜になっても子供が戻って来る事はありませんでした。
親は酷く悲しみに暮れて共に探してくれた村の人々も子供がいなくなる事故なぞ初めてで皆が悲しみに暮れました。
親は毎日毎日子供を探して歩き回りましたが子供が親の前に姿を表す事はありませんでした。
そんなある日の事、子供が行方不明になり一週間程立ってから生活用水から異様な匂いがするという噂が立ちました。
生活用水からそのような話が湧くなんて今までありませんでしたしきちんと毎月掃除もしていましたし蓋も頑丈な物をしていたのでそのような事が起こる事は今まで一度たりともありませんでした。
しかし匂いは日に日に増すばかりで生活用水を使う事を一旦使うことはしないような命令がおり匂いの元を確かめに行く為に親も貯水庫に向かいました。
山を登り頂上までもう少しという所で薄暗い茂みの中から小さな手がこちらに手招きしているのを親がみつけました。
しかしそれはすぐに消えてしまい幽霊だ、と叫んでも誰も信じてはくれませんでした。
しかしそれは貯水庫に行くまで続き恐怖に震えながら親は貯水庫まで村の皆と辿り着いた時にふと気づきました。
手招きをしていた手が貯水庫の中へと消えて行ったのです。
親は嫌な予感がして貯水庫へと走り蓋が開いている事に気づきました。
急いで中を確認するとそこには子供の小さな衣服が水の上に苔を生やして浮かんでいたのです。
親は子供が自分がここにいる事を知らせる為に教えたのだと知り涙が止まりませんでした。
村の人々も悲しみ貯水庫の横に子供の慰霊碑と地蔵を置き毎日そこにお供えするようになりました。
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