雨の中で佇む女
投稿者:ぴ (414)
私が見たものはおそらく幽霊だったと思います。
私はその人を確かに何度も見て、そして向かいのアパートに住んでいた人に不幸が起こりました。
今もこびりついたように離れないのは、その人の最後の言葉です。
私はきっとあの出来事を生涯忘れられないと思います。
私はそこに住み始めたのは、高校を卒業してからです。
家から遠い学校に通うために、私は初めて一人暮らしを始めました。
実家は家族が多かったし、狭くて自由がほとんどありませんでした。
だから一人暮らしは昔からの憧れであり、何もかもが新鮮で何をするのも楽しかったです。
将来に大きな希望を抱いていたし、すごく希望に満ちていました。
そんな中、私は非現実的な体験をしたのでした。
学校から帰ってきたら私はよく買い物に出かけていました。
家族で暮らしていたときはすべて母親が作ってくれていた料理。
でも一人になるとすべて自分で用意しなければいけません。
私は買い出しに出かけて、今日のご飯は何にしようと思いながらわくわくしながら買い物をして、そして帰ってきました。
その頃によく目にしたのが雨の中で誰かを待っている女の人でした。
晴れの日はその人を見かけませんでした。
その人を見るのは必ずといっていいほど雨の日なのです。
近場のスーパーに傘をさして出かけた私が帰ってくると道の向こうにずっとマンションを見上げている女の人がいるのです。
その人はいつも傘を持たず、雨をひたすら浴びながら向かいのマンションを見上げていました。
遠目からしか見ていませんが、20代くらいの若い女性です。
なぜいつもマンションを見上げているのだろうとずっと不思議に思っていました。
ある日の帰りに私は思い切ってその人に声をかけてみたのです。
あまりに雨に打たれているので、心配になって私はその人に傘を渡しました。
「雨がすごいので、さしたほうがいいですよ」と私は家に余っていたビニール傘を善意で差し出したのです。
ぼたぼたに濡れて風邪をひきでもしたら大変だなと思ってあげたものです。
目の前で見たその人はびっくりするくらい綺麗な人でした。
警戒心を抱かれて傘を突き返されたら嫌だと思った私は、なかば押し付けるように持っていた傘を渡したと思います。
その日からその人はそれから私があげたビニール傘をさして、マンションを見上げて待っているようになりました。
詮索していたわけではありませんが、家の窓からも見えたので気にして見ていたら見上げている部屋がどこなのか自然に分かりました。
恋人でも待っているのかなと私は思っていました。
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