軋む音

さすがに同じ時間に同じ音がするのは怖いと思いました。

私が入院中の母にこれを相談すると、「すぐに家を出なさい」と母に言われました。

そしてその日から私は父の家ではなく、祖母の家に住まわせてもらいました。

母が退院してしばらくして、父と母は離婚することになりました。

表向きの理由は父の愛人問題でしたが、後に聞いた話母が離婚を決断した一番の理由は別にありました。

母はあの家に住むようになって、毎夜同じ夢を見たそうです。

それは自分が家で首つり自殺を図る夢なのだそうです。

首吊りで軋む音とずるずるという縄の音が耳元でずっと鳴っており、そして最後に私が母を呼ぶ必死な声が耳に聞こえるのだそうです。

母は連日見るその夢のせいで体調を崩して入院したと言いました。

今は別れて赤の他人となりましたが、父はよほどの人だったのだと思います。

前の奥さんが自殺したときの第一発見者はまだ小さかった娘だと聞きました。

その時の記憶を母は夢で見たのかもしれません。

もしかしたらあの家にはまだ成仏できない前の奥さんの霊がいて、自殺した同じ時間を繰り返しているのかもしれないです。

だから同じ時間に同じ場所で、何かがきしむ音が聞こえるのです。

それは首吊りした奥さんが縄に揺られてきしむ音なのかもしれないと私はぞっとしながら思いました。