引越し先不明のマットレス

俺が大学生の頃に引越しのバイトをしていた時の話。

３～４月の引っ越し業界は大忙しです。転勤や一人暮らしを始める学生などの荷物が単身コンテナに乗って運ばれてきて、引っ越し日になるとなくなるの繰り返しで倉庫は常に満杯でした。

ようやく仕事が落ち着いてきた頃、俺はずっと残っているコンテナが気になりました。

先輩にコンテナのことを聞くと「毎年、１つ２つあるんだよね。行き先不明や引っ越し先不明の荷物」といわれました。

後日、やはりあの荷物は引き取り先も送り先も不明になってしまい廃棄処分されることになりました。

しかしそのコンテナの中にまだ新品に近いマットレスとベッド一式が入っていました。

俺はそれが欲しくなり先輩や上司に話をすると持って帰っていいといわれました。

今までせんべい布団で寝ていた俺はマットレスの柔らかさに包まれその日は寝ました。と

ころが、深夜に目が覚めました。

目が覚めた理由は、「うぅ、うう」と人のうめき声が聞こえて来たからです。

性別は分かりませんが、確かに人の声でした。俺は「えぇ、マジで怖いじゃん」とか思いながら辺りを見渡すと金縛りに合いました。

その恐怖からか気が付くと朝になっていました。

会社でこの話をすると、先輩に「そのベッド一式呪われてんじゃないの」と笑い話にされ腹が立ったのを覚えています。

その夜、気のせいだと自分に言い聞かせ寝ました。

やはり深夜にうめき声で目が覚めました。

しかし、昨夜と違う所はベッドがムニムニと動く事。

俺は、「なんだこれ」とパニックになっていると、また金縛りに合いました。

すると、ベッドとマットレスの隙間から電気のついてない部屋でもわかるぐらい真っ黒な影が出てきました。

俺は逃げ出したいけど金縛りで動けなく、その間に影は俺に覆いかぶさってきました。そして、首を絞められている感覚を感じて間もなく意識が無くなりました。

次の日、すぐにベッド一式を処分しました。俺がもらったベッド一式は本当に呪われていたのでしょうか？

ただ、俺の首にはくっきりと絞められた手形の痣が数日残りました。