曾祖母のお礼参り
投稿者:korn (4)
短編
2022/07/08
07:39
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私が小学校高学年の頃、突然曾祖母が電話を掛けてきた。
曾祖母はその時86歳であり、一か月前から癌を患っていたが電話の数日前に無事退院し、普段通りの生活を送っていた。その電話はまずは母が受けて退院を祝い、どうやら近況を話しているようだった。その後私も電話を代わってもらい久々に曾祖母と会話をすることが出来た。
その電話の10分後、曾祖母は自宅の風呂場で亡くなった。死因は衰弱死だった。私と母はあまりにも突然のことに動揺を隠せず、実感が全くなかった。
数日後、葬儀のため親戚一同が会し、泊りでのお通夜を行った。夕飯の際にまさかの退院後の曾祖母の死について話していた。母が「直前まで電話していたのにほんとうにびっくりした。未だに実感がわかないわ」と語ると、なんと親戚の多くが同じ状況であったようだ。電話を貰い、安堵した矢先に突然の訃報。全員が体験をしているのはとても不思議なことだと幼いながらに感じた。
後から知ったことだが、死期が近い人は無意識的に感謝の気持ちが高まり、そして自分の身内に挨拶をして周るといった行動をとるそうだ。科学的根拠がないものではあるが、ないからこそ、今になっても不思議、あるいは何かの縁を感じざるを得ない体験だった。
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