通算何度目であろうか？加齢すると忘れるのが早い… きっと仕事と家庭のストレスによる疲労のためであろう…
私はこちら側の世界に来ていた
どうしたか？と見覚えある浅黒い長身の青年に声をかけられ私は気が緩んだ 彼である
正確には彼なのか彼女なのかはわからないが 元の世界とこちら側の世界の決定的な相違は人類が二種類に別れている事であった
本来の人類と人口減による労働力不足を補うため人工的に作られた人種である 彼ら？にはナンバーが割り振られ国家間や企業間で厳密に管理されていたようではあった
人造クローン人間であるが表向き人権は保証され使い捨てに出来ないため初期は法整備が難航した模様 能力は旧人類より肉体的にも知性的にも遥か上であったが反乱等を起こさぬためか意識調整がしてあり欲求は薄く消極的のようであった
私は彼から随分こちら側の社会や歴史について教わったが私があちら側の人間と知るや巌なに人類滅亡の理由を口にしなかった 彼は恐ろしく勘が鋭い
私見であるが人間が人間を作る禁忌を犯した事がこちら側の人類滅亡の理由だと解釈している
さて私は端正で理知的で聖人たる彼に今晩の酒を所望した 何せ酩酊し就寝せねば二つの世界を行き来出来ぬのである
明日は天下り上司の接待という外せぬ案件が待っている ちなみに時間経過は両世界とも同じようであった
自動原付だかにより案内されたは崩れつつある元居酒屋で文句を言う前に隣の廃墟たるコンビニから酒類を運んできてくれた
彼が調理した焼き鳥は串焼きではなく丸焼きであった 醸造しつつあるポン酒を瓶ごとあおっていると現実世界の駅で目が覚めた
ただし午前様である ネットカフェでシャワー浴びながら接待先に向かうため身支度をしつつ妻からの鬼コール&メールの返信を苦悩する私であった
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