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不思議体験

ぴさんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

同じ顔の人
長編 2022/06/29 23:31 3,420view

私が初めてその人を認識したのは、実家近くの本屋さんでした。

昔から本が好きで、よく学校帰りに本屋に通っていたのです。

だからよく顔を合わせる店員さんのことは自然と覚えてしまいました。

いくら常連でも、印象の残らない薄い顔だったら忘れてしまうかもしれません。

しかしその女性ははっきりした濃い眉に濃いパーツが特徴的でした。

ハーフな感じもある美人さんで、さらに何度も足しげく通ったため私はその人の顔をしっかりはっきり記憶したのです。

好きだったお店だったからこそ、その人の顔にもなんとなく愛着が湧いて記憶に残ったのもありました。

私とこの女性はあくまでただのバイトとお客さんの関係でした。

人見知りだった私とは本のことで1つ2つ質問をしたくらいでそれ以上の交流があったわけではありません。

もしかしたら相手にとっては「お店の常連」という認識すらなく、顔を覚えられていない可能性も高いです。

一方的にこっちが知っているだけの関係だったかもしれません。

だから私は再びこの人に会ったときに、相手が私を見てまったく反応がなくても違和感はありませんでした。相手が私のことを覚えていないだけと思ったからです。

私がその女性と二回目に会ったのは、知人宅での飲み会でした。

学校卒業後に地元から離れて県外に住み始めた私は、仕事上飲みに行く機会が増えました。

仕事上知り合った人との付き合いで参加した飲み会で、偶然にもその人に再会したのです。

私は見た瞬間に「あ、本屋の人だ」と懐かしい記憶を思い出しました。

地元だったらともかく、こんなところでまた再会するなんて…と私はちょっと運命的なものを感じたのです。

しばらくその懐かしい人をじっと見てしまいました。

けれど、相手は私を見てもまったくピンと来なかったのか、特に反応はありませんでした。

飲み会の中盤にきて、その場に知人が少なかった私はさりげなくその人の近くに行って、勇気をもって話しかけてみたのです。

そしたらすごく感じよく会話してくれました。

本屋ではいつもむすっとしていたし、あまり周りと和気あいあいとしているような姿は見たことがありませんでした。

だけど、まったく認知してなさそうな私に対し、初めて会ったとは思えない感じで話してくれたので、実はこんな人だったんだと驚いていたのです。

しかし、話が進んでも相手はずっと私と初対面な体で話をします。

だから私はなんとなく自分と会ったことがあることを思い出してほしくて、ちらっと地元の話を振ってみたのです。

そこで私は初めてその人が本屋の人とは別人なことに気づきました。

その人の出身地は私の地元とは正反対の場所に位置しており、そしてあろうことか私の地元に行ったことがないというのです。

思わず私は2回も「え、本当に?」と聞いてしまうくらい驚きました。

最初は言いたくない理由があって、私の地元の本屋で働いているのを隠しているのかと思っていました。

でも話を聞くにとても嘘をついているようには思えない話ぶりで、嘘をつく理由もないように思ました。

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