聞き覚えのある間違い電話

間違い電話がかかってくることって、そんなに珍しいことではありません。

しかし、私はこれに恐怖を感じたのです。

その日は家でごろっとして、何もやる気になりませんでした。

もう関係はなかったのですが、昔付き合っていた元カレが事故で亡くなったという連絡を受けました。

もうぜんぜん連絡はとっていませんでしたし、お互いに別の恋人がいました。

それでも彼は特別な思い出があり、なんだかすごく胸が苦しかったです。

そんなときに電話がかかって来て、私はなんとはなしに家の電話に出たのです。

「もしもし、○○さんちのお宅ですか？」と全然知らない苗字を聞かれて、私は「違います」と言いました。

そしたら一瞬シーンとなり、なぜか少し笑いを含んだ声で、「すみません、間違いました」と電話を切ったのです。

初めはただの間違い電話と思ったけど、私はなんとなくこの声に聞き覚えがありました。

だから何か引っかかりを感じて電話を切った後に、しばらく考えたのです。誰の声に似てるんだろうと考えました。

そして思い出したのは昔刃物で脅しまでしてきたストーカーの声でした。

思い当たって、ぞわっとしましたが、しかしそんなはずがありません。

だってこのストーカーはもうかれこれ6年前に亡くなっているのです。

私を追い回す最中に、自宅で心臓発作で亡くなったと聞きました。

私はすごく嬉しくって、当時付き合っていた元カレと「天罰だ」なんて話した記憶がありました。

実はこの当時ストーカー被害にあったときに支えてくれた元カレが、今回事故で亡くなったと連絡を受けた元カレだったのです。

私はあまりのタイミングな間違い電話に、元カレの死と死んだストーカーがどうしても切り離して考えられなくなりました。

それ以降、すぐに引越しして見えない敵から逃げるように暮らしています。

あの間違い電話が再びかかってこないように願っています。