最期の挨拶
投稿者:ナンシー (3)
私が小さい頃、叔父(母方の親戚)がよく家に遊びに来ていました。
私の遊び相手にもなってくれたりと、とてもよくしてくれ大好きな叔父さんでした。
その日も叔父さんが遊びに来ていました。
いつも通り夕飯を食べてから帰るのだろうと思っていたのですが、その日は彼女が家に泊まりに来るからとのことで早めに帰って行きました。
いつもならば駅まで送ったりはしないのですが、その日はなぜか母が駅まで送ると言い出し駅まで一緒に行き電車に乗り込む所まで見送りました。
電車に乗る時も『じゃあ、またねー』といつも通りのお別れでした。
翌日、母の大声で目が覚めました。
どうしたんだろう?と思いながら、トイレに行ってから母の所に行こうと思いトイレへ向かいました。
トイレがある場所は玄関のすぐ横になるんですが、玄関の所に昨日帰ったはずの叔父さんが立っていました。
私は『あれ?叔父さん、朝早くからもう遊びに来たの?』と聞きながらトイレに入りました。
用を済ませ、母の所に行きました。母は電話の受話器に向かって『どうして?!そんな訳ない!』と叫びながら泣き崩れていました。小さいながらも大変なことが起こっているんだと思いました。途中、母に代わり父が電話をしていました。
電話の相手は警察で、叔父さんが自宅で首を吊って亡くなっていたとの連絡でした。近くに遺書が残されおり、昨日話をしていた例の彼女と別れ話になり、自暴自棄になり衝動的に自殺してしまったようでした。
すでに遺体は警察署に安置されており、身元確認をお願いしたいとの話でした。
電話の内容を父から聞いて、私は訳がわからなくなりました。
だって、ついさっき私は玄関に叔父さんがいたのを見たし声もかけた。叔父さんもいつも通りの穏やかな顔で立っていた。それを思い出した途端、一気に血の気がひきました。そして、幼いながらなんとなく『これは言ってはいけない』と思い誰にも叔父さんを見たことは言いませんでした。
しばらくしてから、母に何故あの日に限って駅まで見送りに行ったのか聞いたところ『何か悩んでいるような雰囲気がして、どうにも胸騒ぎがしたから駅まで送ったのよ。あの時、無理にでも引き留めて家に泊まらせれば良かった。』と言っていました。
小さい頃はこの出来事はどちらかと言えば少し怖いと思っていました。
ですが、今思えばちょっとしたことでもすぐに自分のことを一番理解してくれ気にかけてくれる大好きだった私の母に対して最期の挨拶をしに来たのかなと思えるようになりました。
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