作り話
投稿者:とくのしん (65)
大学時代のTという友人から聞いた話。
小学校の同級生にAという、怖い話が好きなヤツがいた。
人が怖がる様を見るのが楽しかったらしい。男女問わず場所を弁えず怖い話をする、そんな無類の怖い話好きな子供だった。
今と違ってネットが普及していない時代、子供が得られる情報なんてたかが知れている。怖い話や都市伝説系の本を読み漁っても、すぐに誰かしらが「それ知ってるよ」なんて言うくらい、情報のネタ元は限られていた。
次第にネタが尽きたこともありAの話を怖がる同級生はいなくなっていった。
それでも必死に怖い話を続けていたAに、周囲も少々うんざりし始めていた頃、女子の一人が
「A君の話って嘘ばっかりでしょ。本当の話じゃないから怖くないんだよね」
と痛いところを突いてしまった。
唐突な一言にAはだんまり、女子の一言に周りも同調した。
するとAは絞り出すように話をし始めた。
学校から少し離れた雑木林の近くに2階屋の小さな廃屋がある。
廃屋の2階には2部屋あって、奥の部屋に行き
「新井さん新井さん、いらっしゃいますか。いるなら合図してください」
と唱えると合図があり、合図を確認したあとに
「新井さん新井さん、いるなら出てきてください」
と唱えると姿を現すというのだ。
Aは一人で試したところ、男の人が姿を現したという。
新井さんというのはその廃屋に住んでいたとされる人で、うわさでは気が狂って一家惨殺し、自分も命を絶ったというどこまでが本当かわからないものである。心霊スポットとして地元ではちょっとした有名な場所であるが故に、Aの話は嘘っぱちの作り話でないかと騒ぎ立てられた。
みんなに嘘つき呼ばわりされたAは半泣きになりながらも必死に本当のことだと反論する。するとクラスのボス的存在のOが、それなら放課後確かめに行こうぜと言い出した。
もし嘘だったらAは罰ゲームな、とAをけしかけると、AはAで意固地になって「嘘だったらスーファミのソフト全部あげる」と、その条件を受け入れた。
放課後言い出しっぺのAと、スーファミソフト欲しさに集まったOを含んだ5人で新井さん家に向かった。
ここから先はその5人のうちの一人、MからTが後日聞いたまた聞き話になる。(Tはホラーの類がNGなので不参加)
放課後、5人は家に帰ることなくそのまま新井さん家に向かった。
Aは道中もいじられ続けてそうだ。
学校から30分程度のところにある雑木林の中を進むとため池が見えてくる。
そのため池のほとりに廃屋があるのだ。
人が住んでいないためか朽ちていて文字通りお化け屋敷。あまりの不気味さに大人はおろか子供ですら入ろうとしない。
5人は廃屋の前でしばし立ち尽くしたものの、スーファミソフトが欲しいOに促されて廃屋に入ることになった。玄関のドアなんて倒れたままになっているから、そのまま容易に中に入れた。
入ってすぐにリビングなのか大きな部屋があったそうだ。探索してみたがゴミだのなんだのでめぼしいものはない。外からの雰囲気とは違って、中は単なるゴミ屋敷という感じで怖さはなかったという。
玄関に戻り、階段を上りいよいよ目当ての2階へと進む。
ギシギシ凄い音を立てていたので崩れてもおかしくなかったそうだ。
2階はAの話通り二間あり、階段上がってすぐに一部屋、その部屋を通ってもう一部屋という作りだったそうだ。
埼玉のあそこのことかな
面白かったです
うん
あそこだね。今は骨組みだけらしいよ
ゾクゾクした。
久しぶりに怖い話見れて満足した。