きをつけてね
投稿者:梅雨守 (3)
友人Aの話です。
Aは鍵っ子でど田舎暮らし。Aの地元では小学生でも一人で登下校して親が帰ってくるまで過ごすのは割と普通でした。
周りの大人たちの目があったことで子どもたちが守られていたんだと思います。
その日もAは両親が帰ってくるまで一人でゲームをしたりしながら過ごしていました。すると
ピンポーン
チャイムが鳴ります。近所のおばちゃんが世話を焼きにきてくれたり、回覧板を届けに来たりすることはよくあったのでまぁそんなところだろうとあまり考えることなくAは玄関を開けました。
「あっ、こんにちはー。僕一人かな?」
玄関に立っていたのはスーツを着たサラリーマン風の男でした。わかりやすく言えば田舎の高齢者を
狙った飛び込み営業です。
Aの家にも似たような営業がたまに来ていたのでなれた対応で今は自分しかいないから対応できないと男に告げると
「そっかー。けど記念にこれを上げるね。」
差し出されたのはよくわからないメーカーのアロエジュースでした。少し小さいサイズの試供品のようです。Aがお礼をいって受け取ると男は
「もしよかったら2階にいるおばあさんにも」
と同じものをもう一つ手渡して「歓迎されていないようだから出直す」と手を振って帰っていきました。
おばあさん?今家にはAしかいないはずです。それにAは両親と3人暮らし。おばあさんなんて住んでいません。Aは手を振る男を
『ちょっとまって!おばあさんって誰ですか!』
と呼び止めましたが「居留守くらい気にしないから大丈夫」と振り返ることなく男は去っていきました。
Aは全然大丈夫じゃありません。悪質な嫌がらせかと一瞬考えましたが、あの飄々とした男がそんなことをするとも思えません。
なら本当に二階に誰かいるのか。Aは心底怖くなって私の家に逃げ込んできました。
息が切れて動転したAはたどたどしくも私にこの話をして、最後に家から出る瞬間だれかに「きをつけてね」って言われた気がしたんだと付け加えました。
一体誰がAを見守ってくれていたんでしょうか。
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