同僚のA子さんが、合コンを開いてくれました。
女性の参加者は、A子さんと私の他に、同じ職場で仲の良いB子さんとC子さん。
男性の参加者は、A子さんの友人D男さんと、D男さんの同僚のE男さんとF男さんです。
女性4人対男性3人で、女性が1人余っちゃうんだと思っていたら、どうやらG男さんという男性があと1人遅れてくるそうです。
「G男さんが来るまでに軽く自己紹介をしちゃおうか」ということになり、取りあえず飲み物だけ先に注文してお酒を飲みながら和気あいあいと話していたのですが、30分経ってもG男さんはやって来ません。
男性側の幹事であるD男さんが「あいつ（G男さん）、10分くらいで来れるって言ってたのになー」なんて愚痴っていると、噂をすればなんとやら、D男さんのスマホにG男さんから電話がありました。
D男「あ、G男？お前今どこにいるの？もう先にご飯食べちゃうよ」
G男「あーーーーー（ギャリギャリギャリ）、今ーーーーーー、今ああああああああーーーー（ギャリギャリギャリギャリ）」
D男「何？なんだって？よく声が聞こえないんだけど…」
G男「今ーーーーー、今向かってーーーーーー（ギャリギャリギャリ）」
漏れ聞こえてくるG男さんの声はやけに間延びしていて、途中途中に何か機械が空回っているような雑音も入っているので、よく聞き取れません。
それでも何とか聞き取ったD男さんは電話を終え、「今向かってるって。もうあと少しでつくんじゃないかな。先に食事注文しちゃお」と言い、メニューをオーダーし始めました。
（残業だったのか、それとも電車が遅延していたのか、どちらにしても災難だなぁ）なんて思いながら、今いるメンバーでまた楽しくお喋りをしました。
しかし、更に1時間が経っても、一向にG男さんは現れません。
D男さんは「あいつどうしたんだ？道にでも迷ってんのか？」なんて冗談を言いながら、G男さんに電話をかけました。
するとG男さんはすぐに電話に出たようなのですが、また間延びした声と雑音のせいで何を言っているのか要領を得ないのです。
何とか聞き取ったD男さんによると、さっきと同じ「今向かってる、あともう少しで着く」ということを言っていたようでした。
きっと急いで向かっているならば、せっかくだからもう少し待ってあげようということになり、更に1時間待ちました。
それでもG男さんは現れず、「そろそろお店も閉店時間になるし、G男さんには悪いけど今日はこの辺でお開きにしよう」と誰かが言った時、近くから「ごめんーーーー、おそ、遅くなってーーーー、今ついたーーーーーーー」と、間延びした声が聞こえました。
横を向くと、いつの間にいたのか見知らぬ男性が立っていたのです。
（誰だろう？）と不思議に思っていたら、男性陣が「G男、やっと来たのか」「帰るとこだったよ、ちょうどよかった」と声をかけていて、その男の人がG男さんだと分かりました。
G男さんはまたあの間延びした声で「いやあーーーー、悪い、悪いーーーー。腹が減ってなぁーーーー、先に食べていいかぁああああ」と言いながら、了承を得る前に物凄い勢いでテーブルの上に残っていたものを食べ始めたのです。
眼をギラギラさせながら、一心不乱に手づかみで食べる姿に私も他の人達も圧倒されてしまいました。
いち早く我に返ったD男さんが「お、おい、G男。お前そんなに腹が減ってたのか。はは、っていうかお前ってそんな話し方する奴だったっけ」と冗談めかして言いましたが、G男さんは何も答えず、食べ続けます。
G男さんが食べている最中、誰も一言も声を発せず、何故か息を殺してその様子を眺めていました。
少ししてG男さんが食べ終えると、D男さんがまた、「おい、G男、今日は何か変だぞ。どうしたんだ？」と声をかけました。
G男「変ーーー？変かぁああ？俺は、俺はーーーーいつも通りだーーー」
D男「いやいや、いつもそんな話し方しないだろ。どうしたんだよ」
G男「変じゃないーーー、いつも通りだーーーーああああああああ」
普段のG男さんを知っている男性陣が言っても、G男さんは「変じゃない、いつも通り」と繰り返します。
怖いですね