監視カメラに映っていた男
投稿者:友無 (10)
今から10年以上前、僕が25歳の時の話です。
当時僕はアパートを借りて一人暮らしをしていました。家賃も安く、かなりのボロアパートだったのですが、こまめに掃除をしたり、いわば大切に住んでいました。
ある日、仕事を終えて夜遅くに帰ると、トイレの電気がついていました。消し忘れかな?と思いましたが、自分はかなり几帳面な性格なので、そんなはずはないなという妙な違和感がありました。
それからというもの、家に帰ると何となく人の気配がするような気がして、もちろん探してみても家の中には誰もいないのですが、何だか気持ちが悪く管理会社に相談をしてみました。しかし「なんだか人の気配がする」と言ったところで真剣には取り合ってもらえず、仲のいい友人に相談したところ、「仕事に行ってる間、家の中を監視カメラで撮影しておいたら?」とカメラを貸してくれました。
それからカメラを仕掛け、仕事から帰ってきてそのカメラをチェックするという日々が始まりました。
ところが三日間撮影してみても何も映っておらず、やっぱり気のせいかな……と思っていると、四日目、おそろしいものが映っていました。
僕が仕事に行き、その数時間後、全然知らない中年の男が家の中に入ってきたのです。どうやら合い鍵を持っているようでした。男は何をする訳でもなくソファに座り、ただただぼうっとしていました。それからしばらくして家の中を物色し始め、やがて監視カメラの存在に気付くと、特に驚いた様子もなくにやりと笑いました。
戦慄した僕はカメラを持って家を飛び出し、警察や管理会社に相談しました。しかし顔が映っているとはいえ犯人を特定する事は難しく、結局僕はそれからネカフェで生活をしました(家に一人でいる事が怖かったので)。警察には「現行犯なら逮捕できる」と言われましたが、たとえ犯人が捕まろうがもうその部屋で生活する事が考えられなかったので、友人に手伝ってもらいながら引っ越しの準備を進め違うアパートに引っ越しました。
結局あの男が誰だったのかは分かりませんが、なぜ監視カメラを見て笑ったのか、今でもあの笑顔は鮮明に記憶に残っています。
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