戸棚をノックする
投稿者:ぞい (15)
短編
2022/03/30
21:32
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地元の商店街に小さな駄菓子屋がりました。
子供の頃によく通っていたんですが、そこのおじいさんが奥の座敷にある茶箪笥の戸棚をノックしていました。
特になにかある訳ではないんですが、店に来た子どもと話をしたりしていると、時々思い付いたように奥の座敷に上がって茶箪笥の上の戸棚を「トントン、トントン」と叩いていました。
ある日、私がその駄菓子屋に行くとおじいさんは居なかったので、何を買うか迷いながら店内を見ていると、カサコソと物音がしました。
「カリカリカリ」と何かを引っ掻くような音が奥の茶箪笥から聞こえてきたんです。
「カリカリカリ」「カリカリカリカリ」
「ガリガリガリ」「ガリガリガリガリ」
その音はだんだん大きくなってきたので、私は怖くなり始めました。
すると、トイレに行っていたのかおじいさんが慌てた様子で戻って来て、「トントン、トントン」と戸棚をノックすると、引っ掻くような音はなくなりました。
その日、何故かわからないですがおじいさんから「これをやるから黙っててくれないか」と駄菓子2つとジュースを1本貰ったのを覚えています。
戸棚に何が居たのかというよりも、おじいさんの貼り付いたような笑顔が怖かったです。
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