振り向いてはいけない
投稿者:いちご大福 (12)
短編
2022/03/25
07:43
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学生の頃の話です。
部活で遅くなった私は、いつもの川沿いの道を自転車で帰っていました。
辺りは暗く急いで帰ろうしていたとき、何故かよくわからないけれど空気が重くなるのを感じました。
暑さのせいか冷や汗なのか体中から汗が吹き出るのがわかりました。
いつもと変わらない道のはずなのに何が起きたのか自分でもわからず、なんとなく急がなきゃという思いだけが強くなっていきました。
そんなとき、後ろの方から声が聞こえた気がしました。
気のせいだと言い聞かせて振り向いてはいけない気がしたのでそのまま前だけを見て自転車を漕ぎ続けていると、今度はハッキリと聞こえました。
「おぎゃぁおぎゃぁ」
ハッキリと聞こえたその声はまるで赤ん坊の泣き声のようでした。
田舎なので車もあまり通らず誰ともすれ違ってもいない、民家は少し離れた場所にあるためここまで聞こえるはずがない。
何が起きているのかわからず、きっと猫だと自分に言い聞かせながら急いでいると、だんだんと声が近づいてくるのがわかりました。
そして近づいてきたかと思うと急に自転車の後輪部分がズシッと重くなり後ろに乗っているのがわかりました。
それでも必死で自転車を漕いで川沿いを抜けるといつの間にか自転車も軽くなっていました。
あのとき振り向いていたらどうなっていたのかと思うと今でもゾッとします。
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