9月5日の電話
投稿者:ぴ (414)
毎年この日に電話がかかってくることを、私は友達に話したことがあります。
そしたら「未練を残した元彼からの電話だったりして~」と面白半分に言われてしまいました。
私は友達の茶々を入れる様子にちょっと腹が立ちました。
彼の死が未だ癒えていなかった私は、友達に軽口にムッとしたことをよく覚えています。
そんな風に過ごして4年目の頃だったでしょうか。
私はやっと元彼の死を忘れようとしつつありました。
共通の友達が引き合わせてくれた人と付き合い始めていたのです。
周りの友達にやっと吹っ切れたかとすごく応援されていました。
そしてそれとなく、付き合っている彼に9月5日の電話の話をしたこともあります。
彼は元カレの話をしても、嫌な顔一つせずに「大切にされてたんだね」と言ってくれて、彼の心の温かさに救われるようでした。
そして9月5日は二人で家で過ごすことにしたのです。
彼もまったく怖がることもなく、「今幸せだ」と安心させようと言ってくれてました。
本当にいい人と出会えたと思えたし、私は今度こそ幸せになると思っていたのです。
9月5日、私は彼と一緒に過ごしながらあの電話を待ちました。
しかし、毎年のルーティンのようだった電話はその日かかってきませんでした。
いつもかかってきていたあの電話がないことで、私は不安になりました。
今までの電話はただの思い込みで、偶然だったかもと思うとなんだか寂しくもありました。
でも彼が「もう心配ないと分かったんじゃない?」と言ってくれて、なんだかそんな気がして元気が沸きました。
それからしばらく何事もなく過ごしていたのですが、ある日を境に彼と連絡が取れなくなりました。
全然連絡が取れなくなって、私はなんだか胸騒ぎがしたんです。
あの日取れない電話がかかってこないことがずっと引っかかっていました。
元カレは生前とても嫉妬深く寂しがりな性格で、私に別の好きな人ができても「簡単には譲らない」と言っていました。
そんな彼がいくら相手がいい人でも簡単に譲ったりしないような気がしたいのです。
だから連絡がつかない彼の家に向かいました。
しかし、彼が住んでいたマンションはもぬけの殻でした。
心配になって管理人の方に聞いてみたら、手紙を預かっていると言われました。
私は不思議になりながら、その手紙を読んだわけですが、信じられない言葉が並んでいて、理解するのに時間がかかりました。
手紙の内容は自身が結婚詐欺師だと告白するものです。
結婚詐欺でたくさん女性を泣かせてしまったこと、私のことを騙そうとしたことをひたすら謝罪する内容の手紙に、理解に苦しみました。
なぜ突然それを打ち明けたのかも分からないし、それをすぐに信じることもできなかったからです。
しかし、彼はそれ以降、私の前には二度と現れませんでした。
連絡先も私とやり取りする手段をすべて断ってしまい、直接しゃべることもできなかったです。
そのまま彼は行方を完全に眩ませてしまいました。
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