同窓会に混ざりこんだモノ
投稿者:ぴ (414)
当時私はまだ就職したばかりで、目まぐるしい生活をしていました。
仕事は順風満帆とまではいきませんが、運よくいい職場に恵まれて、同僚や先輩方に助けてもらいながら仕事を一生懸命覚えているところでした。
職場の環境は悪くはなかったのですが、でもやっぱり初めての仕事ということでストレスはあります。
だから友達から「久しぶりに会いたいね」と同窓会に誘われた時には、二つ返事で「いいよ」と答えたのでした。
同じ働く同級生から悩みを聞いてもらったり、みんなの近況が知りたくて、わくわくしながらこの同窓会に参加しました。まさかそこで、あのような怖い思いをするなんて思っていなかったのです。
同窓会に集まったのは中学校でクラスが一緒だったメンバーでした。
中学校のときのクラスは本当に仲が良くて、みんなで何をするのも楽しかった思い出があります。
だからきっとたくさんのクラスメイトが参加していると思ったのですが、行ってみると集まったのは半数にも満たない人数で、ちょっとがっかりした記憶があります。
私が会いたがっていた友達の何人かは欠席しており、がっかりしました。
男性は8人、女性は11人参加していました。合計で19人。
私たちは最初学校の近くの有名な公園で待ち合わせをして、そこで久しぶりに会ったことを懐かしみました。
そしてみんなで予約していた居酒屋さんに行き、わいわい昔話を楽しみました。
昔の楽しかった思い出、面白かった思い出は湧き水のように途切れずどんどん出てきましたし、とても盛り上がりました。
20人に満たないメンバーしかいないにしてはすごく盛り上がって、ずっと笑い声が響き渡っていたと思います。
そんなときに誰ともなく、突然話題に上がってきたのが「詩織」の話でした。
「そういえば、詩織ってどうしてる?」
と誰かが言い始めて、詩織の話になったのです。
みんな「知らない」とか「そういえば、会ってない」とか、誰も近況を知っている人はいませんでした。
詩織というのは中学生の頃、クラスの中心だった生徒なのです。
すごく可愛くて、明るくて、リーダーシップも取れるクラスの人気者でした。陸上部の部長もしており、成績も上位。
上級生からも一目置かれる存在で、私は詩織のことをいつも羨んでいました。
「おまえ、知らないの?」と小突かれたのは、健吾という同級生です。
実は詩織と学生時代ずっと付き合っていたのはこの健吾でした。
だから、近況を知っているのではないかとみんな思ったわけですが、健吾は首を振りました。
中学を卒業して即刻別れた健吾はその後詩織の足取りは全く知らなかったようです。
「俺も知りたいわ」と健吾が小声で言ったので、「えー?まだ未練あるの?」と横にいた生徒に茶々を入れられていました。
そこで一旦、詩織の話は途切れて終わったように思ったのです。
そこからしばらく弁当箱を教室の端で全部ひっくり返した話とか、校長のカツラの話で盛り上がりました。
しかし、そんな中また誰かが言ったんですよね。「そういえば、詩織って今実家にいるらしいよ」って。
また詩織の話かと思って、私はその話を始めた人物を見つめました。その子を見てびっくり。
詩織の話を始めたのは未希子というクラスで一二を争うくらい目立たない地味な生徒でした。
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