隠しリンクの先の「絵画展」
投稿者:赤壁二世 (13)
ウェブカメラから盗撮しているような画角でおっさんが映ったと思えば、この男性は画面を指で小突く。
恐らくスマホ操作しているのだと気付き、宛ら俺はスマホ視点の中からおっさんを眺めている立場。
俺は知りもしない他人の顔のドアップを退屈そうに眺めていた。
すると「お客様が来場されました」と画面に文字が表示される。
俺は咄嗟に「あれだ!」と数週間前の記憶を呼び起こし、前のめりになった。
まあ文章は違うが、字体と配色等は例のサイトで見た演出と瓜二つである。
続いて「絵画を選択中」と表示されると、モザイク調の升目が画面いっぱいに広がっていき、一つ一つに誰かのモノと思われる身体の一部が映し出され、俺は息を吞む。
その中の一つに俺の顔があった。
そして、どうやらおっさんが俺の顔の画像をタップしたようで、画面に俺の顔が映し出され、
「あなたは選ばれました」
と、頭上からアナウンスが流れた。
困惑していると急に顔面に亀裂が入ったような激痛が走り、眼圧で目が潰れたような音が聞こえた後、吹き零れた血液で鼻の穴が塞がれて苦しくなる。
片手で果実を握り搾ると果汁が出てくるが、まさに俺の頭部がその有様。
あまりの痛さにのたうち回ろうが、この激痛は消えることはなくしばらく続いた。
やがて痛みは我慢できる程度にまでは慣れ、額縁の中でどれほどの時間が経過したのか定かではない。
この畏怖の念が晴れる日がくるのかわからないが、俺は牢獄に近い額縁の中でただ夢から覚めることだけを切に願った。
体感で何日か経過したある時、漠然とした意識の最中で廻廊に目を向けると奥の方から人影がだんだんと大きくなっているのが見える。
誰かがこっちへ歩いてきているようだ。
誰かも分からない人影は次第に輪郭をはっきりとさせ、それが普通の出で立ちをしたおっさんだったと知り、意思の疎通を取ろうと声を出してみる。
「うあああああっ!」
だが、再び顔に激痛が走り、傷が裂け、目玉がポロリと転がり、悲鳴が上がるだけだった。
俺に気付いたおっさんが表情を引きつらせて後退りするのが見え、俺は死に物狂いで手で空を掻き、額縁を掴む。
掴めた。
俺は額縁から出られる事に気付いた瞬間、火事場の馬鹿力の如く体を支え立ち、外へと這い出ることに成功した。
俺の顔から滴る液体がクリーム色の床を赤く染めるの見つめ、何とか助けを呼んで貰えないかとおっさんににじり詰める。
おっさんは俺を得体の知れない幽霊かモンスターと勘違いしているのか、青白く恐怖に戦いた顔で見下ろして震えていた。
そんなおっさんの足首に手を絡め、俺は力一杯引き寄せる。
必死に抵抗するおっさんに苛立ちを覚えながらもズリズリと足首を引き摺りながら、額縁へと向かう。
あれ?なんで額縁に戻ろうとしているんだ?
俺の意思と反する行動に戸惑いつつも、俺はおっさんを額縁へ押し込めた。
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