隠しリンクの先の「絵画展」
投稿者:赤壁二世 (13)
ただ、作品はどれも長い間空気中に触れた血が赤黒く変色したような色彩を織り成す下卑た絵で、どれもこれも肌色と赤色が混じった不快な配色だった。
端から見れば、休日に遊覧する穏やかな初老のような歩みで絵画を見て回る俺だが、一枚一枚がスマホで展開されていた画像だと気づいたときには自然と眉間に皺が寄っていく。
しかも、絵画を長く見つめれば動画として動き始める手の凝った作品だ。
例えば、右手の絵と思っていた額縁を見つめれば、ハンマーか何かで何度も叩きつけられ、血飛沫を飛ばしながらミミズのように潰されていく動画へと切り替わる。
同じように、耳の絵画を見れば、何者かに耳を引っ張られるとステーキを切るようにナイフで切断されていく。
俺は悪趣味なスプラッター動画からなるべく目を反らして奥へと進んだ。
そうしてやってきた最奥にあるのは通常より一回り大きな額縁で、その中には俺がスマホで一度見た男の顔が崩れ落ちる絵が飾られていた。
突如「あああああ!」と絶叫する声と共に、額縁から渋柿が潰れたような顔の男が這い出て床に崩れ落ちる。
僅かに上げた頭から目玉らしき眼孔がうかがえ、それが俺を睨んでいるのがわかった。
引き返そうと踵を返せば、男の腕が足を絡めとり、ズリズリと額縁がある方へと引き寄せられる。
重心を掬われ転倒した俺は、何とか逃げ出そうと這いずるものの尋常ではない男の馬鹿力に負けてみるみるうちに引き寄せられてしまった。
「やめろよっ!」
俺が怒鳴ろうとも男は狂気に満ちた笑みを浮かべるように、赤黒い肉の裂け目から白い歯を見せ、俺を無理矢理額縁の中へと押し込む。
額縁の中は闇が広がるばかりで宇宙空間に投げ込まれた感じがした。
そして、当惑する俺に男は額縁の外から掠れた声を投げかける。
「俺は自由だ……次は、お前の番だ……」
男は、今更ながら自分の顔を押さえ激痛に耐えているのか千鳥足で立ち去ろうとしている。
俺はこのままでは一人取り残されると思い手を伸ばすが、俺と額縁、即ち外の世界との境に何か見えない壁があるのか遮断されていることに気づく。
必死に見えない壁を叩き男を呼ぶが、男は俺がやってきた廻廊を進み、やがて影を小さくさせた。
暗い暗い空間に視界が遮られ、そして俺は夢から覚める。
目覚めた俺は寝汗をびっしょりとかいていてかなり上気していた。
気持ちの悪い夢から覚めた俺は、気分転換にコンビニへ買い出しに出ることに決めた。
元々根暗な俺が更に陰鬱な陰りを見せることで、何か世界の異分子になったような錯覚に落ちたが、中二病のような妄想を即刻振り払い路肩を歩く。
その時、車のクラクションとブレーキ音が耳をつんざいたかと思えば、背中に衝撃が走り、俺は眼前へ突き飛ばされる形で体を中空に投げ出された。
鈍重な意識の最中、ハッと眼下を見れば網状の排水溝の蓋が目につき、俺は顔面からそこへ叩きつけらることとなり、一瞬の激痛の中で意識が途絶えた。
再び、俺は奇妙な夢に戻る。、
どうやら先程見た夢の続きのようで、俺は暗闇に一人取り残されたまま額縁の中から外の世界を眺めている。
俺は今さっき事故にあったと認識しているが、死んでしまったのだろうか。
もしかしたらここがあの世という奴なのかもしれないと考え始めた時、外の対面の壁にある、一つの額縁が目に入る。
他と違い、幾分か大きく、まるで俺に見易いように配置された額縁に映像が映る。
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