白髪の持ち主
投稿者:誠二 (20)
短編
2022/02/03
21:52
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学生時代住んでいた安アパートの話です。
そのアパートは築30年のボロい建物で空き室が多く、電気が点いているにもかかわらずなんとなく薄暗い感じがしました。暗さは昼間でもさほど変わらず、それが精神状態に影響するのか住人も暗くて無口な人が多かったです。
少しでも生活費を節約したかった私は、事故物件だと不動産屋に前置きされた部屋に詳しい事情も聞かず入居しました。
入居から暫くは何事もなく過ぎたのですが、そのうち異変が起こり始めました。畳の上にやたらと白い毛が落ちているのです。
手に取って観察したところ白い毛の正体は痩せ細った白髪でした。当時私は十代後半、もちろん白髪なんてありません。
部屋の異常が畳に落ちてる白髪だけなら我慢しようとも思ったのですが……ある夜寝苦しさに目を覚ますと、膝まで届く白髪の老婆がズッ、ズッと畳の上を這いずっているのを見てしまいました。
しかも老婆は全裸で、茶褐色に萎んだ皮膚が張り付いていました。
恐怖とパニックで悲鳴を上げる私に老婆が向き直り、頭に掴みかかってきました。
「髪をくれぇええええええ」
次の瞬間目を開けると老婆は消え去っていたものの……何者かに力ずくでむしられたかのように、私の髪はごっそり抜けていました。
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